小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第26話 一掃された湿り気(2/3)


 やがて、シャオレイはぽつりとつぶやいた。
「――フェイリンは、本当に”兄さん”になりたいのよ」

「……え?」
 ミアルは、ぱちぱちとまばたきした。

 シャオレイは自分に言い聞かせるように、きっぱりと言った。
「それならつじつまが合う。
義兄妹《きょうだい》の契りを交わしたのも、色事《いろごと》に乗らなくなったのも、私を助けてくれるのも、私が義妹《いもうと》だから。
そうに決まってるわ。
あれは恋心ではなく、義妹を慈しむ心よ」
(私に欲情するのは……まあ男だから、そこは仕方ないわよね。
でも、抱きしめる以上のことはしてこない。
ちゃんと義兄《あに》してるわ。
つまり……そういう生き物なんだわ、義兄って)

「私は義妹として振る舞えばいいのよ……完璧に」
(兄さんは私を見限ったりしないはず……。
少なくとも、彼が敵に回ることは無いわ……たぶん。
――いえ、絶対絶対無いわ。
そういうことにしないと!)

 使節団をもてなす宴に、皇太后の誕生祭に、ジュンの攻略――シャオレイには、やることが山積みだった。フェイリンの感情を、あれこれと考えている暇はない。
 シャオレイは、大きく息をついた。
(私は、ゼフォンの命《いのち》を守るためにここにいるのよ……)

 ミアルは、気の毒な義兄に同情していた。
(私にはフェイリン殿が、カナリア妃様を愛する不器用な男にしか、見えないのですが……。
――女の心も体も、欲しいだけの)

 ミアルの目が、ふと暗くなる。
(だって……心が無いなら、体なんか手に入れたってつまらないもの)
 ミアルの心に浮かんでいたのは、彼女の観察対象――ジュンだった。

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