小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第30話 染み入る雫(4/6)
◆
ゼフォンは、裏の外廊下の一角で月を眺めていた。外套を羽織り、椅子に腰かけている。
そこへ、チャオ内侍が薬湯を運んできた。
「陛下、今宵はこれをお召し上がりください。
お体に害ございませんように」
ゼフォンはそれを受け取り、ぬるい液を一気に喉へ流した。広がった苦みを薄めるようと、水を飲む。
やがて、大きく息をついた。
(……今宵の舞台は、カナリアに命じる必要など無かった)
ゼフォンは、シャオレイに無理をさせたくはなかった。だが、他に手立てが無かった。
臣下の口を封じるには、”妃の才”で黙らせるしかない。
(なぜ、予が女ひとりを守るのに、これほど理《ことわり》を立てねばならぬ……)
シャオレイの頬の柔らかさ。シャオレイの額に口づけたときの、震える彼女のまなざし――全てを抱きしめてやりたかった。
(だが、それは叶えてはならぬ)
七夕の宴の夜、ゼフォンはシャオレイの命を選んで刺客を逃がした。そのことを、重臣たちから強く批難された。
だから、夜伽を再開できないのだ。そんなことをしたら、シャオレイが臣下たちから、傾国とささやかれるのは明白だ。
そうなれば、政敵たちはそれを口実に牙を剥く。
(己が堕ちれば、すべてが崩れる。
帝位を守れなければ、カナリアの首もまた飛ぶのだ――……)
風が吹き、雲が月を隠していく。雲間に透ける光が、冷たくゼフォンを照らしていた。
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ゼフォンは、裏の外廊下の一角で月を眺めていた。外套を羽織り、椅子に腰かけている。
そこへ、チャオ内侍が薬湯を運んできた。
「陛下、今宵はこれをお召し上がりください。
お体に害ございませんように」
ゼフォンはそれを受け取り、ぬるい液を一気に喉へ流した。広がった苦みを薄めるようと、水を飲む。
やがて、大きく息をついた。
(……今宵の舞台は、カナリアに命じる必要など無かった)
ゼフォンは、シャオレイに無理をさせたくはなかった。だが、他に手立てが無かった。
臣下の口を封じるには、”妃の才”で黙らせるしかない。
(なぜ、予が女ひとりを守るのに、これほど理《ことわり》を立てねばならぬ……)
シャオレイの頬の柔らかさ。シャオレイの額に口づけたときの、震える彼女のまなざし――全てを抱きしめてやりたかった。
(だが、それは叶えてはならぬ)
七夕の宴の夜、ゼフォンはシャオレイの命を選んで刺客を逃がした。そのことを、重臣たちから強く批難された。
だから、夜伽を再開できないのだ。そんなことをしたら、シャオレイが臣下たちから、傾国とささやかれるのは明白だ。
そうなれば、政敵たちはそれを口実に牙を剥く。
(己が堕ちれば、すべてが崩れる。
帝位を守れなければ、カナリアの首もまた飛ぶのだ――……)
風が吹き、雲が月を隠していく。雲間に透ける光が、冷たくゼフォンを照らしていた。