小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第30話 染み入る雫(5/6)
◆
揺吟宮《ようぎんきゅう》の寝所のあかりはほのかに落とされ、静けさが部屋を包んでいた。
侍女たちは寝衣に着替えたシャオレイに頭を下げて、部屋を出て行った。
残されたミアルがシャオレイにそっと近づき、声をひそめた。
「妃様。今宵の舞台……あまりにも、見事すぎました」
シャオレイは首を傾げた。
「それが、何か?」
ミアルは小さく息をついてから、言葉を続けた。
「――妃様があれほどの采配をなされば、誰もが黙ります。
ですが……黙る代わりに、見定めようとします」
その声に、静かな警戒がにじんでいた。
シャオレイは、眉を寄せた。
シャオレイの脳裏によみがえったのは、頬に触れたゼフォンの手のぬくもり。そして、シャオレイの額にだけ落とされたあの口づけ――そこでようやく、思い当たった。
七夕の宴の夜、ゼフォンがシャオレイのために刺客を逃がしたこと。その一件で、重臣たちの不興を買ったことを。
(ああ、そういうこと……。
――ゼフォンが夜伽を自粛しているのも、当然だわ)
「ありがとう、ミアル。
気づかせてくれて……」
ミアルは、小さく頭を下げた。
シャオレイはトボトボと、隠し部屋へ入った。寝台に腰をかけ、息をつく。
シャオレイには、悔しさと恥じらいがこみ上げていた。
(気づかなかった……あんな簡単なことにも。
ゼフォンを守ると心に誓って、爪を研いでいたのに……)
シャオレイは髪からそっと、フェイリンから貰ったかんざしを抜く。
それをまじまじと眺めているうちに、かつて彼からかけられた言葉がよみがえる。
『シラサギくらいには成長したな』
シャオレイは苦笑いした。
(偉そうだけど……お世辞じゃないわ。
そんな気取ったことできないものね、兄さんは)
シャオレイは布団にくるまり、枕元に置いたかんざしへそっと笑みを向けた。
(兄さん……私はこれからも、さえずるだけの小鳥を演じるわ。
鳥籠のなかで、ゼフォンのために舞って歌うの。
それが、私の役目……)
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揺吟宮《ようぎんきゅう》の寝所のあかりはほのかに落とされ、静けさが部屋を包んでいた。
侍女たちは寝衣に着替えたシャオレイに頭を下げて、部屋を出て行った。
残されたミアルがシャオレイにそっと近づき、声をひそめた。
「妃様。今宵の舞台……あまりにも、見事すぎました」
シャオレイは首を傾げた。
「それが、何か?」
ミアルは小さく息をついてから、言葉を続けた。
「――妃様があれほどの采配をなされば、誰もが黙ります。
ですが……黙る代わりに、見定めようとします」
その声に、静かな警戒がにじんでいた。
シャオレイは、眉を寄せた。
シャオレイの脳裏によみがえったのは、頬に触れたゼフォンの手のぬくもり。そして、シャオレイの額にだけ落とされたあの口づけ――そこでようやく、思い当たった。
七夕の宴の夜、ゼフォンがシャオレイのために刺客を逃がしたこと。その一件で、重臣たちの不興を買ったことを。
(ああ、そういうこと……。
――ゼフォンが夜伽を自粛しているのも、当然だわ)
「ありがとう、ミアル。
気づかせてくれて……」
ミアルは、小さく頭を下げた。
シャオレイはトボトボと、隠し部屋へ入った。寝台に腰をかけ、息をつく。
シャオレイには、悔しさと恥じらいがこみ上げていた。
(気づかなかった……あんな簡単なことにも。
ゼフォンを守ると心に誓って、爪を研いでいたのに……)
シャオレイは髪からそっと、フェイリンから貰ったかんざしを抜く。
それをまじまじと眺めているうちに、かつて彼からかけられた言葉がよみがえる。
『シラサギくらいには成長したな』
シャオレイは苦笑いした。
(偉そうだけど……お世辞じゃないわ。
そんな気取ったことできないものね、兄さんは)
シャオレイは布団にくるまり、枕元に置いたかんざしへそっと笑みを向けた。
(兄さん……私はこれからも、さえずるだけの小鳥を演じるわ。
鳥籠のなかで、ゼフォンのために舞って歌うの。
それが、私の役目……)