小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第32話 観察対象との初接触(2/5)




 恵慈宮の外では、ミアルが用事をこなすふりをしながら歩いていた。
 ミアルの装いは、いつもより華やかだった。
 シャオレイがくれたとっておきの生地を使って新調した、桃色の裙《くん※》。青色が基調の、控えめで上品な耳飾りと首飾り。少し大きめの造花が、髪を飾っている。 [※スカート]
 ミアルは仕上げに、いつも隠している胸元をあらわにした。――ジュンを釣るために。

(ジュン様は派手好みだから、気に入られるかしら?
彼の許容範囲は広いようだけど……)
 ミアルは不安と期待の中、ジュンを探した。
 やがて、建物の裏で巡回中のジュンが、ミアルの視界に入った。

 ミアルはさりげなくジュンに近寄り、わざとぶつかりそうになった。

 その瞬間、ジュンの目が鋭く光った。指先をミアルの細い指に絡ませ、引き寄せる。ミアルはあっという間に、ジュンの胸の中に捉えられていた。

 ミアルの胸は高鳴っていた。こんな感覚は、今まで味わったことがなかった。
 12年間遠くから見ていた男に、今日初めて近づいたのだ。ときめかないわけがない。

 ジュンは、目を細めながら言った。
「――お前……ミアルだろう?
カナリア妃の侍女の」

 ミアルは静かに呼吸を整え、ほほ笑みを浮かべた。
「私のことをご存じなのですね……ラン公子《こうし》」

 ジュンは、ミアルのあごを持ち上げる。
「ふぅん……なかなかいい顔をしてるな」

 ミアルは困惑した笑みを浮かべながらも、内心興奮していた。
(ああ……こんな間近で、こんな芸術品を見られる日が来るなんて……!
カナリア妃様にお仕えしていてよかったわ……!)

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