小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第33話 見射る瞳(2/7)
◆
ミアルは人気《ひとけ》のない宮道《きゅうどう》を、静かに歩いていた。
突然、誰かの手がミアルの視界に割り込み、壁につく。
ミアルは、進路をふさがれた。わずかに目を見開いたものの、彼女は手の持ち主――ジュンを見上げてほほ笑んだ。
「ごきげんよう、ラン公子《こうし》」
ジュンは、口の端をつり上げたまま言った。
「お前に尋ねたいことがある」
「何でございましょう?」
「昨日……俺の尻のことを言ったな。――どこで聞いた?」
ジュンの指に髪を絡められながら、ミアルはすらすらと語り出した。
「いえ、見ておりました。この目で。
処罰は10打。
兵への見せしめとして、修練場の一角で行なわれました。
ラン公子は4打までは無表情でしたが、5打目で、腰がわずかに引きました。
耐えてはおられましたけれど……それが、かえって際立って見えました。
8打目で……赤く、皮膚が裂けました。
9打目以降、背中の筋肉が、少しけいれんしていました。
でもラン公子は、わずかに眉を動かしただけで、表情一つ変えなかった。
――そういえば、立ち会っていたドン監察官が、つまらなさそうな顔をしておりましたね」
思い切り眉をひそめているジュンへ、ミアルは静かに笑った。
「……見ていたとすれば、その程度です」
ミアルに克明に記憶されていて、ジュンは丸裸にされたような気分だった。だが、悪い気はしなかった。
「なにが“その程度”だ……。
女が男の体を見た上に詳細に語るとは、品がない」
「あら……女たらしのラン公子でも、そう思うんですの?」
ちらりとジュンに見られて、ミアルは詫びた。
「――失言でした、お許しを」
「命知らずな女だ」
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ミアルは人気《ひとけ》のない宮道《きゅうどう》を、静かに歩いていた。
突然、誰かの手がミアルの視界に割り込み、壁につく。
ミアルは、進路をふさがれた。わずかに目を見開いたものの、彼女は手の持ち主――ジュンを見上げてほほ笑んだ。
「ごきげんよう、ラン公子《こうし》」
ジュンは、口の端をつり上げたまま言った。
「お前に尋ねたいことがある」
「何でございましょう?」
「昨日……俺の尻のことを言ったな。――どこで聞いた?」
ジュンの指に髪を絡められながら、ミアルはすらすらと語り出した。
「いえ、見ておりました。この目で。
処罰は10打。
兵への見せしめとして、修練場の一角で行なわれました。
ラン公子は4打までは無表情でしたが、5打目で、腰がわずかに引きました。
耐えてはおられましたけれど……それが、かえって際立って見えました。
8打目で……赤く、皮膚が裂けました。
9打目以降、背中の筋肉が、少しけいれんしていました。
でもラン公子は、わずかに眉を動かしただけで、表情一つ変えなかった。
――そういえば、立ち会っていたドン監察官が、つまらなさそうな顔をしておりましたね」
思い切り眉をひそめているジュンへ、ミアルは静かに笑った。
「……見ていたとすれば、その程度です」
ミアルに克明に記憶されていて、ジュンは丸裸にされたような気分だった。だが、悪い気はしなかった。
「なにが“その程度”だ……。
女が男の体を見た上に詳細に語るとは、品がない」
「あら……女たらしのラン公子でも、そう思うんですの?」
ちらりとジュンに見られて、ミアルは詫びた。
「――失言でした、お許しを」
「命知らずな女だ」