小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第33話 見射る瞳(5/7)


 ミアルは、ジュンの横顔を観察していた。

 目元の鋭さ、唇のかすかなひきつり――そこへジュンの心のきしみが現れていた。

「でも……あの日からずっと、あなたは私の観察記録の中にいます」

 ジュンがハッとしてミアルを見た。
「観察……?」

 ミアルは、12年分のジュンの記録を語った。

 旗を掲げたまま、剣を振るった初陣《ういじん》。
 その時の功績で、宮廷で演武を披露したこと。
 交代式で軍服の襟を直す仕草――

 ジュンすら忘れていたすべてを、ミアルは事細かに覚えていた。ジュンの胸の奥が、静かに熱を帯びていくのを感じる。

「ジュン様が折衝都尉《せっしょうとい※》として駐屯地へ行かれてからは、噂でしか知りません。
“無敗の指揮官がいる”と。
でも、“やりすぎる”とも……」 [※地方設置の折衝府の長。折衝府は、徴兵した農民の訓練や出征をつかさどった]

 ジュンはその思い出に、刃を突き付けられたような痛みがあった。
 だが、彼の口をついたのは――
「それで?」
 居心地が悪いはずなのに、ジュンは聞かずにはいられなかった。

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