小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第34話 観察者の余裕

第34話 観察者の余裕(1/4)


 11月の午後の光が差し込む、瑶吟宮の琴房。そこで、シャオレイがせっせと曲を作っていた。

 ヤン大夫人とそのお供の夫人たちに、披露するためだ。既存の曲よりも、目新しく耳当たりの良いものの方が、彼女たちに喜ばれる。何より、贈り物の質も違ってくるのだ。
 絹、香木《こうぼく》、装飾品――これらは換金して、”妃の盾”への報酬にあてている。

 シャオレイは声をひそめて、ミアルへ言った。
「そういえば――”予言”通りなら、ドン監察官がそろそろ例の病になるわね」

 ミアルは、うなずいて返した。
「はい。証言者の情報が、予言の一部と一致しましたからね」

 証言者――それは、東北第8駐屯地の折衝都尉だったジュンに、治療を受けた兵だ。シャオレイの予言を元に、ミアルがすでに証言者を探し出して情報を引き出していた。
 証言者は、ジュンに堅く口止めされていたが、情報源を隠すことと報酬を条件に、話してくれたのだ。

 シャオレイは、ジュンを増長させようと企んでいた。
「ラン・ジュンが助けたら、名誉回復にもなるし自信も取り戻せる。
ただ……彼が素直に乗るかは――」
(前世の彼が、宿敵のドン監察官を救うことはなかったし)

「私にお任せください。彼をその気にさせてみせます」
 ミアルの言葉に、シャオレイがうなずいた。

 少しの沈黙ののち、シャオレイは尋ねた。
「ミアル、彼と――体の関係になるのは……」

「楽しみです」

「そうなの……!?」

「だって、口づけですら名人芸だったんですよ?
ああ……これで閨事《ねやごと》になったら、どんなふうになるのか……」

 うっとりするミアルに、シャオレイは思わず目をぱちぱちと瞬かせた。
「そう。……避妊は――」

「抜かりはないです。ロウ侍医に丸薬をいただきました」

「頼もしいわ。――でも、用心してね」

「?」

「男女の仲になると、情が移るから……」

 ミアルは小さく笑って、尋ねた。
「妃様も情が移られました?青楼時代に」

 シャオレイは「いいお客さんはいたけど……」と言いながら、首を振った。

「ならば、私も大丈夫です。それに――私はただの観察者ですから」
 ミアルは、にっこり笑って言った。

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