後宮の小鳥は爪を研ぐ ―転生歌姫の散りゆく愛と芽吹く愛―

第3話 暴れ猫と刺客

第3話 暴れ猫と刺客(1/5)


 翌朝、シャオレイは華宵宮《かしょうきゅう》の朝見《ちょうけん※》に出席していた。 [※皇后などに拝謁すること]
 本来なら、妃よりも位の低い”姫”のシャオレイはこの場に出られないが、特例で許されている。
 なぜなら、ゼフォンから「金糸雀《カナリア》」の封号《ほうごう※》を賜《たまわ》っていたからだ。それは特別な寵愛の証しだった。 [※皇帝が授けた名]

 ゼフォンはシャオレイの歌声を、さえずりの美しいカナリアに例えていた。それはかつて、遠い西の国からゼフォンへ献上された鳥だった。

 シャオレイはカナリアを見たこともなかったが、悪い気はしなかった。自分の歌声を誇らしく思っていたからだ。

 シャオレイは袖を静かに揺らし、ほどよい笑みを作っていたが、内心は苦痛だった。
 だが、後宮で波風を立てず生きるために、こうした場に顔を出さねばならない。
(――ああ、今朝もゼフォンと朝食をとれなかったわ。
昨夜の刺客騒ぎの収拾に追われているのね。
でも後宮は、昨夜の騒ぎが嘘のようだわ。
さすがは皇后ね)

 妃たちは、昨夜の刺客の話に夢中になっていた。

 だが、刺客に襲われた当のメイレンは、いつも通りだった。その優美なほほ笑みに、シャオレイは前世では気づかなかった不気味さを感じた。

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