小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第36話 すれ違う夜伽(2/5)


 一方のゼフォンの頭にあったのは――かすかな疑念だった。
(予がカナリアを妃にした。
――本当にそうか?
予は今回、何をした……?
妃への昇格を承認しただけだ。
妃にしてやれたのは、予の力じゃない。
カナリア自身の力だ……)

 シャオレイは、ただの寵姫だった。シャオレイの入宮当時、臣下たちの強い反対で、ゼフォンは彼女を妃へ封じることができなかった。
 だがシャオレイは、今自らの手で道を切り開いた。ゼフォンの庇護のもとではなく――彼女自身の力で。

 それがゼフォンに、無力感を抱かせていた。
 不意に、ゼフォンへ答え合わせが浮かんだ。
(もしかして――これがカナリアの狙いだったのか?
カナリアは権力を得るために、妃になって基盤を固めた……?
そして、贈与品を集めたのは賄賂にするため……?)

 シャオレイが高額の贈与品を受け取っていたことは、解決したはずだった。――ゼフォンはそう思い込みたかった。
 だが、実はずっと、ゼフォンの胸には疑惑が重く沈んでいたのだ。

 跪拝を終えたシャオレイが、ゼフォンへとほほ笑む。

 澄んだシャオレイの瞳に、ゼフォンは疑念を振り払った。
(違う……カナリアは強欲な女ではない。
ただ、情に厚いだけだ)

 ゼフォンはシャオレイと初めて出会ったとき、後宮の妃たちと違うと感じた。
 シャオレイの飾らない笑顔と、媚びない言葉と、誇りを秘めた空間――その全てを信じたのだ。
(もしも、それすら見誤っていたとしたら。
もしも、カナリアもまた、あの毒婦――メイレンと同じだとしたら……。
予は二度と、誰も信じられなくなる)
 ゼフォンは、それだけはどうしても認めたくなかった。

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