小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第37話 ねたみの軍旗(5/5)




 その日の夕方、退勤したジュンは、いつもの待ち合わせ場所でミアルを待っていた。だが、ミアルは来ない。
(どこへ行ったんだ?あの女――?)
 ミアルを探すのは、ジュンには癪だった。ジュンは、そのまま宮廷の正門へ向かった。

 正門を出た瞬間、ジュンは視線に気づいた。――従者ではない。
 その方向へ目を向けると、またもやミアルがいた。

 ミアルは広場の隅で、送迎の馬車の群れにまぎれて、ジュンを待っていたのだ。
 ジュンと視線が交わった瞬間、ミアルはふっとほほ笑んだ。

 ジュンはミアルへ目で合図し、彼の送迎の馬車へ一緒に乗り込んだ。

 ジュンの従者はそれを見ないふりをして、馬車を発進させた。



 馬車の中で、ミアルはそっと外套を脱いだ。
 すると、金の刺繍がきらめく桃色の抹胸裙《まっきょうくん》が、現れた。
 金の簪《かんざし》と玉の耳飾りが、ミアルの黒髪と白い肌を際立たせている。
 唇には紅が差され、ミアルの顔をあでやかに彩っていた。
 足元には、刺繍が施された緋色の絹の靴――がのぞいている。
 これらはすべて、ジュンが先日贈ったものだった。

 ジュンはミアルを、上から下までじっくりと眺めてから言った。
「よく似合ってる。さすが俺の女だ」
 ジュンはミアルを抱き寄せ、彼女の唇をついばんだ。

「――まさか、休暇申請をとってたのか?あれを見るために」

「はい」

「お前、暇だな……」

 ジュンの口調は小馬鹿にしているようでいて、どこかゆるんでいる。

 そんなジュンも、ミアルには愛しかった。

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