小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第40話 屈辱の仕返し(2/5)




 宮中の人気《ひとけ》の無い場所で、ジュンはロウ侍医と密かに会っていた。
 ジュンは、自分が尚薬局《しょうやくきょく》※に出向いても、医官たちに取り合ってもらえないと分かっていた。 [※宮中の医薬などをつかさどる部署]
 だから、ミアルに仲介をしてもらったのだ。

 ”ロウ侍医はカナリア妃付きの侍医だが、出世欲がなく派閥にも属さない。ミアルの父と同郷という理由で妃付きになった”――それが、ジュンの従者が調べた結果だった。

 ロウ侍医がシャオレイの協力者だとは、ジュンは知る由も無い。

「ドン監察官の病は悪化している――そうですね?」

 そう言ったジュンに、ロウ侍医は晴れない表情で返す。
「――はい」

「彼を治せないと、あなたの立場は……非常にまずい」

 ロウ侍医は、渋い顔でうなずく。

「監察官の症状は、高熱、うわごと、幻覚で暴れる。
発症は、東北第8駐屯地を視察した後。間違いないですか?」

「おっしゃる通りです」

「私が折衝都尉《せっしょうとい》時代に、治療した兵の症状と酷似しています」

「治せるのですか!?」

「もちろんですが――ドン監察官の診察を、させていただきたいのです」

 ジュンの言葉に、ロウ侍医もミアルも顔色を変えた。

「私をあなたの従者として、往診に同行させてください。
診察記録だけでは不十分ですので。
――あなたの首が地面に落ちるのを、私も見たくないんですよ」
 ジュンは、同情するように言った。

 ミアルは、ジュンとロウ侍医の顔を交互に見ていた。
(ジュン様はドン監察官に恨みがあるから、何をするかわからない。
監察官の私邸に同行させたのが露見したら、それこそ厳罰だわ……)

 ロウ侍医は長い沈黙の末、ため息をついた。
「”診察だけ”ならば。それ以外は、決して……」

「もちろんです。
ご協力に感謝いたします。
――この薬を用意していただけますか」
 ジュンは懐から処方箋を取り出し、ロウ侍医に渡した。

 ミアルは想いを噛みしめていた。
(でも、やっぱりジュン様はすごいわ……!
自分の頭で考え、最適な道を選んで動いている。
私たちは最小限の道を整えただけ――)

< 194 / 244 >

この作品をシェア

pagetop