小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第41話 床の中の乾き(3/5)




 その日の夜更けに、ゼフォンは紫微殿の執務室で、チャオ内侍からの報告書を読んでいた。

 記録によれば、瑶吟宮の使用人は、ミアルが仕えるようになってから総入れ替えされていた。珍しいことではあるものの、そこに違反は見つからなかった。

(カナリアが画策したとて、ミアルさえも加担するなどあり得ない。
だが、この徹底ぶり……逆に不自然だ)

 使用人の出自、経歴、――どれもが綺麗すぎた。
 手元の報告書には、「疑わしき証拠は無い」と記されている。だが、証拠が無いことが、むしろ“意図の存在”を際立たせていた。

(まるで、瑶吟宮に疑念の目が向かないように、誰かが先回りして整えたようだ。
――メイレンか?
仮にそうだとしたら、あやつはカナリアの動きを……警戒している?
それとも……利用しようとしているのか?)

 ゼフォンは椅子にもたれ、深く息をついた。
(カナリア……そなたは、予に何を隠している?)



 華宵宮《かしょうきゅう》では、メイレンがミンシーから報告を受けていた。

「陛下は、小鳥の使用人たちの調査報告を受けたとか……」

「あやつが今さら調べたとて、何も出て来はせぬというのに……愚かだな」
 メイレンは小さくあざ笑った。

 ゼフォンの読み通り、メイレンがシャオレイの使用人の記録を改ざんしていた。
 揺吟宮に忍び込ませた間者の下女から報告を受けたあと、メイレンが揺吟宮を調べさせた。そして、”妃の盾”である、宦官3人の存在を事前に察知していたのだ。

 メイレンが鼻で笑った。
「小鳥は武装するつもりだな……意外と頭が回る」

「良いのですか?このまま放置して……」

「いかに戦闘に秀でた宦官とはいえ、たった3人では牙もむけまい。
――監視だけ続けよ」

 メイレンはゼフォンを愚かと呼んでいるものの、警戒を怠っていなかった。
(小鳥の宦官どもを密かに消すのはたやすい。
だがそれが、ダン・ゼフォンの罠でないとも限らぬ。
小鳥の使用人を調べたのも、私に対しての演技やもしれぬしな)

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