小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―
第3話 暴れ猫と刺客(5/5)
シャオレイはひとしきり笑い終えると、涙を手巾で拭いた。
「きっと、私の侍女のシンルイが蔵をのぞきに来たのでしょう。
でもそのときあなたは蔵の外にいて、シンルイの思惑に気づき、猫を入れてくれました……」
思い出し笑いをしかけたシャオレイを、フェイリンはにらんだ。
シャオレイは口元を抑えて、続けた。
「でもあなたが見つからなくてよかったですわ……。
そうなっていたら、皇后は宮女ではなく、兵を差し向けていたはずですから。私が怪しい行動をしていたから、皇后は牽制《けんせい》したのでしょう」
フェイリンは立ち上がって「思ったよりは、頭が回るんだな」と、言った。
「そうですわね、小鳥でもそれなりに」
シャオレイは額の小鳥を指差した。そして、おしろいを片付けて言った。
「――どうして戻ってきてくれたのですか?”暴れ猫”様」
「……フェイリンと呼べ」
そう言ってからフェイリンは顔をしかめた。
(なぜ俺は本名を名乗ってしまった?
……まあいい、どうせ俺の正体にはたどり着けまい)
「――昨夜の借りは返す。当面は手を貸してやるが、俺の邪魔はするな」
フェイリンの言葉に、シャオレイは目を伏せた。
シャオレイは彼について何も知らない。だから、フェイリンに有益な彼自身の”予言”はできない。
(”当面は”……。
つまりフェイリンは、完全に味方になってくれたわけじゃない。
このままでは、彼と縁が途切れてしまうわ……)
シャオレイは、お茶をフェイリンへ差し出した。
フェイリンは、今度は素直に受け取って口にした。彼の仕草は、昨夜深手を負ったことをまったく感じさせない。
シャオレイはそれに感嘆していた。
(……相当な手練れね。ますます彼を手放したくなくなったわ。
そのためにはもう少し、こちらに引き寄せなくては。
――それなら、私に差し出せるものはあれしかない……)
シャオレイはひとしきり笑い終えると、涙を手巾で拭いた。
「きっと、私の侍女のシンルイが蔵をのぞきに来たのでしょう。
でもそのときあなたは蔵の外にいて、シンルイの思惑に気づき、猫を入れてくれました……」
思い出し笑いをしかけたシャオレイを、フェイリンはにらんだ。
シャオレイは口元を抑えて、続けた。
「でもあなたが見つからなくてよかったですわ……。
そうなっていたら、皇后は宮女ではなく、兵を差し向けていたはずですから。私が怪しい行動をしていたから、皇后は牽制《けんせい》したのでしょう」
フェイリンは立ち上がって「思ったよりは、頭が回るんだな」と、言った。
「そうですわね、小鳥でもそれなりに」
シャオレイは額の小鳥を指差した。そして、おしろいを片付けて言った。
「――どうして戻ってきてくれたのですか?”暴れ猫”様」
「……フェイリンと呼べ」
そう言ってからフェイリンは顔をしかめた。
(なぜ俺は本名を名乗ってしまった?
……まあいい、どうせ俺の正体にはたどり着けまい)
「――昨夜の借りは返す。当面は手を貸してやるが、俺の邪魔はするな」
フェイリンの言葉に、シャオレイは目を伏せた。
シャオレイは彼について何も知らない。だから、フェイリンに有益な彼自身の”予言”はできない。
(”当面は”……。
つまりフェイリンは、完全に味方になってくれたわけじゃない。
このままでは、彼と縁が途切れてしまうわ……)
シャオレイは、お茶をフェイリンへ差し出した。
フェイリンは、今度は素直に受け取って口にした。彼の仕草は、昨夜深手を負ったことをまったく感じさせない。
シャオレイはそれに感嘆していた。
(……相当な手練れね。ますます彼を手放したくなくなったわ。
そのためにはもう少し、こちらに引き寄せなくては。
――それなら、私に差し出せるものはあれしかない……)