小鳥の爪―寵姫は二番目の恋に落ちる―

第4話 姫の色仕掛け

第4話 姫の色仕掛け(1/2)


 シャオレイは静かに息を吸ってから、フェイリンにひざまずき、深く頭を下げた。
「フェイリン様。どうか、私にお力添えを賜りますよう、お願い申し上げます」

 シャオレイの丁寧すぎる頼みに、フェイリンは眉をひそめた。

 シャオレイは顔を上げ、組んでいた手をゆっくりと下ろした。すると、彼女の豊かな胸元があらわになり、薄暗い部屋でほのかに白く浮かんだ。

 フェイリンはその肌に一瞬目を奪われるが、すぐにそらした。

 フェイリンの視線を、シャオレイは見逃さなかった。ゆっくり立ち上がり、そっと彼の胸元へ触れた。

 薄衣《うすぎぬ》越しにシャオレイに伝わる、彼の硬い筋肉。しなやかさと、積み重ねた鍛錬の跡。

 ゼフォンとは違う感触が、シャオレイに伝わってきた。
(まるで刀剣のよう……)

 フェイリンは、シャオレイの手を振り払わなかった。

「必ずや”ご恩”をお返しいたしますわ……」
 シャオレイは媚びすぎでも清らかすぎでもない、ほどよい笑みを浮かべて言った。
「あなたは孤独な道を選ぶ人なのでしょう。
それができるのは、たった一人でも敵へ突き進む力があなたにあるゆえ。
私には無いのが悔しいですわ……」
 シャオレイはそうささやきながら、指先でゆっくりと彼の胸を撫でる。

 その瞬間、彼女の動向を見つめていたフェイリンの肩が、ほんのわずかにこわばった。

 それをシャオレイは見逃さず、フェイリンの首すじへささやく。
「だから――あなた様が欲しいのです」

 シャオレイの、風に溶けるような声。花のような甘い匂い。その吐息に、フェイリンの胸はざわついていた。
(鬱陶しい……)

 フェイリンは、シャオレイの顔へ手を伸ばした。その小さなあごをとらえ、上げる。

 シャオレイはフェイリンをまっすぐ見つめている。彼もまた、目をそらさなかった。
 ふたりの視線が、しばらく絡み合っていた。

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