小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第43話 奈落への、秒読み(3/5)




 瑶吟宮《ようぎんきゅう》の琴房で、シャオレイの琴の音が響いている。
 それは、ゼフォンがシュエン妃と伽をした夜、フェイリンがシャオレイへ弾いてくれた旋律だ。

(琴で慰めてくれるなんて、あの人ったら器用なんだか不器用なんだか……)
 シャオレイに、思わずほほ笑みが浮かぶ。

 不意にミアルが慌てて入ってきて、さっき見たジュンの様子を興奮をにじませながら語った。

 それを聞いて、シャオレイは声をひそめた。
「――ラン・ジュンはずいぶん荒れてるわね」

「もしかすると、じきに帝位を奪うかもしれませんね」

「それもあり得るわね。でも……早すぎるわ」

「妃様の予言では、今から2年後――ファンレン暦10年でしたよね」

「ええ……。
ラン・ジュンに兵権《へいけん※》は無いから、三日天下《みっかてんか※※》で終わるかもしれないけど――」 [※軍を指揮する権限][※※ごく短い期間だけ権力を握ること]
 とはいえ、ゼフォンの命を奪わせる気は、シャオレイにはまったく無かった。

 シャオレイは身震いした。
「もう処刑に持ち込む機会が来たなんてね――」
(どうする?
フェイリンを呼び戻して、ジュンを討ってもらう?
いえ、彼はリーハイの私兵団に潜入中……そちらを放置できないはず)

「ゼフォンに、謀反の兆候を打ち明けたほうがいいかしら……」

「証しがあれば、陛下にご報告するのは有効かとは思いますが……」

 シャオレイは息をついて、「……それが無いのよね」と言った。

「私が今夜、より深くジュン様を探ってまいります。
もし私が戻らなかったら、そのときに陛下へご報告を」

「一人で行くの?私の”盾”から誰かを――」

 ミアルが軽く笑った。
「ジュン様は、私の腕をひねり上げたりするかもしれませんね」

「笑ってる場合じゃないのよ?」

「――冗談です。
彼には、私に危害を加える理由がありません。
それに……ジュン様は鋭い方ですから、護衛の気配だけで気づかれるかと――」

 シャオレイは小さくうなずいた。

< 210 / 244 >

この作品をシェア

pagetop