小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―
第4話 姫の色仕掛け(2/2)


 やがてフェイリンは、あごをつかむ手にわずかに力を込めて言った。
「言っておくが――俺に色仕掛けは通用せんぞ」
 それは警告だった。

 シャオレイは彼の冷ややかな視線に射抜かれて、一瞬息をのんだ。
(懐かしいわ……歌妓だった頃に、接待に付き合わされてる高潔な高官たちから、こんな目で見られたことがあったわね)

 シャオレイは負けじと、両手をフェイリンの指に絡ませた。
「今は私の意向が伝わればよいのです……」

 フェイリンは鼻で笑い、シャオレイの手を冷たく振り払った。
「……くだらん」
 そう言って、フェイリンは扉へと歩き出した。

 シャオレイはその背中に向かって、明るい声で投げかける。
「そういえば、私の予言は当たりまして?」
 答えないフェイリンへ、彼女はさらに言った。
「ぜひ、残り2つの予言もお確かめくださいませ」

 フェイリンは振り向くことなく、去っていった。

 シャオレイはフェイリンを見送った後、深いため息をついた。
(フェイリンは思ったより気位が高いのね。簡単には落ちない……)
 それから、笑みを浮かべた。
(でも……効いてはいたわ。彼は理性で抑えてるだけよ。
私を蔑んでいた高官たちも結局、私と床を共にしたもの。
彼らは私を拒むことも出来たのにね)

< 23 / 31 >

この作品をシェア

pagetop