小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―

第5話 仇討ちの理由

第5話 仇討ちの理由(1/5)




 それからシャオレイは数日間、信頼できる侍女を見つけるため、自らあらゆる部署を尋ね回っていた。
 内侍省《ないじしょう※》からの人材は、メイレンの息がかかっているからだ。 [※使用人の人事や宮中の事務をつかさどる部署]

 シャオレイのことは、すぐに使用人の間で噂になった。

「誰も姫様のお気に召さないんだって」
「青楼上がりのくせに、高飛車ね」
「貴い身分を気取ってるけど、あたしたちよりも下賤な女なのに」
「寵愛されているから、いい気になってるのよ」

 さまざまな陰口がシャオレイの耳に入ったが、構っていられなかった。

 シャオレイは、宮中の東屋《あずまや》で一休みしていた。彼女の脚を揉もうとした侍女に、「自分でやるわ」と断った。
 シンルイが裏切り者だったため、他の侍女たちも信用できなかった。

 だが、先日の刺客騒ぎのこともあり、シャオレイがひとりで出歩くことは許されなかった。

 シャオレイは自分の脚を揉みながら、ため息をついた。
(なかなかしっくりくる者は見つからないわ……。
”小鳥”の頭じゃ、考えられることはたかが知れてるわね。
――ならば、”龍”の知恵を借りればいいのよ)



 シャオレイは、侍女を伴って紫微殿《しびでん》の執務室にいた。

 ゼフォンは無数の書状をさばいている。
 刺客が宮中で見つからず、捜索範囲を宮廷外に広げたため、ここ数日は騒然としているからだ。
 ゼフォンは書状から目を離さないまま、シャオレイへ言った。
「会いに行けなくてすまぬ」

「いえ……大変な時ですもの」

 シャオレイは、自分の侍女から滋養のある汁物を受け取って、ゼフォンに差し出した。

 それをゼフォンは一気に飲み干して、言った。
「少し気晴らしに出よう」

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