小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第49話 一瞬の本音(5/6)


 そんなときだった。寝台の奥にある隠し扉が、静かに開かれた。

 シャオレイが驚いてそちらを見ると、そこからフェイリンが現れた。
 フェイリンと目が合った瞬間、シャオレイの全身から力が抜けていく。それから、シャオレイに涙があふれた。

 その予想外の姿に、フェイリンの理解は追いつかなかった。
(何かあったのか……?)

 やがて、シャオレイは布団を蹴って靴も履かずに、フェイリンへと駆け出した。
「フェイリン……!」

 フェイリンは、久しぶりにシャオレイから名を呼ばれた。――震える声で。
 フェイリンがとっさに腕を広げると、柔らかな体が彼に飛び込んできた。その勢いが、フェイリンにほのかな悦びをもたらす。
 フェイリンがしっかりと腕で包むと、シャオレイは安堵したように大きく息をついた。

 シャオレイは、フェイリンの硬くてしなやかな胸の中にいた。シャオレイを確かに受け止めてくれていることを、フェイリンの鼓動が教えてくれていた。
 土埃の向こうにある懐かしいフェイリンの匂いが、シャオレイの鼻をくすぐる。
 シャオレイは、震える指先で彼の背を掴んでいた。
 フェイリンもまた、シャオレイの肩を抱いている。
 衣《ころも》越しに伝わるフェイリンの熱が、シャオレイに告げていた。
 ”そなたは、ここにいていい”と。

 ただの女としてのシャオレイが今、フェイリンにすがっていた。――義妹《いもうと》として演じているのではなく、青楼の女として媚びているわけでもなく。

 フェイリンの鼻を、シャオレイの春先の庭のような、甘い香りがくすぐる。
(俺は仇討ちを成し遂げるために、生きてきた。
だから、シャオレイを手に入れるのは諦めていた。
いや――こいつの心が俺に向いていないから、諦めていたんだ。
心が無いなら、無理に奪ってもむなしいだけだからな……)

 フェイリンは、目を細めた。
(だが……今シャオレイは俺へ逃げてきた。
求めたんだ、俺を。
――こいつの居場所は、ダン・ゼフォンじゃない)
 フェイリンに湧いていたのは、高揚感だった。彼が義兄として自制する理由は、もう無かった。
(俺は仇討ちを成し遂げるし、こいつも手に入れる。
両方俺のものだ)

< 243 / 255 >

この作品をシェア

pagetop