小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第52話 謀反の夜

第52話 謀反の夜(1/5)




 ジュンが謀反を起こしたのは、12月上旬の深夜だった。

 まずジュンの配下が、禁軍のシン統領の私邸を襲撃した。
 狙いは、虎符《こふ※》の片割れを奪うことだ。もう一つはゼフォンが所持しているが、それを両方揃えれば、軍を掌握できる。 [※軍を動かす、虎の形の割符]

 シン統領の私邸にあらかじめ潜入させていた、ジュンの間者が門番を倒す。間者が内側から門を開けると、そこからジュンの配下たちが侵入した。

 ジュンの配下たちは、虎符が保管してある書斎へと一直線に向かう。そして、事前に把握していた、書斎の戸棚を開けた。だが――
「虎符が……無い……?」
 ジュンの配下のひとりが、がくぜんとした声を上げた。部屋中の戸棚や引き出しを開けていくが、見つからない。

 突然、書斎を取り囲む兵たちの気配が押し寄せた。ジュンの配下たちは逃げる間もなく、あっという間に捕らえられた。

 これを指揮していたのは、リーハイだった。この襲撃を阻止するために自ら出向き、虎符を事前に移させていたのだ。
 リーハイは権力を狙ってはいたが、謀反を起こそうとまでは思っていなかった。そんなことをすれば、朝廷の臣下たちの反感を買い、自滅するのは目に見えているからだ。
 だから、ジュンを切り捨てて謀反を止める。――それがリーハイにとっての得策だった。

 だが、リーハイがこの場に現れた理由は、それだけではない。
 リーハイは、シン統領の間で取引を密かに交わしたのだ。

 ジュンが統領の私邸を襲撃したことを、シン統領は隠す。その代わりに、シン統領の私邸に間者が潜入していた失態を、リーハイが内密にする――と。

 このことがゼフォンに知られれば、シン統領も処刑されかねないからだ。

 こうして、今夜の襲撃は揉み消されたのだった。

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