小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―
第5話 仇討ちの理由(3/5)
むつまじいシャオレイたちの姿を、遠くから見つめる影があった。宦官に扮したフェイリンだ。
(あの女、昨日は俺に媚びていたくせに――。
青楼出身だから、ああいうことに慣れていたのか)
彼は小さく鼻を鳴らした。
フェイリンは、ゼフォンへ視線を向けた。
(それにしてもダン・ゼフォンは愚かだな。
――まだあんな毒婦を正室に据えているとは……)
毒婦とはメイレンのことだ。
フェイリンが彼女を狙う理由は、自分の一族――ユン家の仇《かたき》討ちだ。彼は、たったひとりの生き残りだった。
◆
12年前――ゼフォンが皇太子だった頃、メイレンは彼の側室の一人だった。ユン家の長女のユン夫人と正室の座を争っていた。
ある日、メイレンはユン夫人に残酷な選択を迫った。
『正室の座を諦めるか、家を失うか――選ばせてやる』
ユン夫人は気丈にもそれを断ったが、その日の夜、ユン家は夜襲をかけられて滅ぼされた。
その知らせを受けた衝撃でユン夫人は流産し、一族を殺された自責の念に駆られて、自ら命を絶ったのだ。
宮中ではその事実は伏せられ、病死として扱われた。
その後、ゼフォンはメイレンを皇太子妃に選んだ。
◆
フェイリンの目には、シャオレイが映っていた。
(どうせあの女も、いつか同じ目に遭う。
ダン・ゼフォンは姉上を守りきれなかった男だからな)
むつまじいシャオレイたちの姿を、遠くから見つめる影があった。宦官に扮したフェイリンだ。
(あの女、昨日は俺に媚びていたくせに――。
青楼出身だから、ああいうことに慣れていたのか)
彼は小さく鼻を鳴らした。
フェイリンは、ゼフォンへ視線を向けた。
(それにしてもダン・ゼフォンは愚かだな。
――まだあんな毒婦を正室に据えているとは……)
毒婦とはメイレンのことだ。
フェイリンが彼女を狙う理由は、自分の一族――ユン家の仇《かたき》討ちだ。彼は、たったひとりの生き残りだった。
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12年前――ゼフォンが皇太子だった頃、メイレンは彼の側室の一人だった。ユン家の長女のユン夫人と正室の座を争っていた。
ある日、メイレンはユン夫人に残酷な選択を迫った。
『正室の座を諦めるか、家を失うか――選ばせてやる』
ユン夫人は気丈にもそれを断ったが、その日の夜、ユン家は夜襲をかけられて滅ぼされた。
その知らせを受けた衝撃でユン夫人は流産し、一族を殺された自責の念に駆られて、自ら命を絶ったのだ。
宮中ではその事実は伏せられ、病死として扱われた。
その後、ゼフォンはメイレンを皇太子妃に選んだ。
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フェイリンの目には、シャオレイが映っていた。
(どうせあの女も、いつか同じ目に遭う。
ダン・ゼフォンは姉上を守りきれなかった男だからな)