小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第55話 甘くて美しい罰(3/3)


 ジュンはミアルのあごをつかんで顔を上げ、小さな包みを彼女に見せた。
「これは、お前への贈り物だ」

 ジュンの指先が、油紙《ゆし》をゆっくりと開いていく。すると、中から蜜がけされた小さな丸薬――遅効性の致死毒が現れた。 [※油を塗った、防水紙]

 それからジュンは、それを舌の上で弄《もてあそ》んで見せたあと、ゆっくりとミアルへ口づけした。ジュンの舌が、丸薬をミアルの口の中へ滑り込ませる。
 ジュンはしばらくしてから、唇を離した。
「飲め。――俺を裏切った罰だ。
俺以外には解毒できんぞ」

 ジュンの言葉に、ミアルは従った。それは、ジュンにミアルが屈服したからではない。
(言葉では説得できないのなら、もうこれしかない。
あなたに嘘を重ねて逃げるより、真正面から受け止める。
あなたの信頼を得るために、命さえ預ける。
決してあなたを見捨てないことを、証明するわ……)

 ジュンは、ニヤリと笑って言った。
「ゆるしを乞えば、殺しはしない。――俺は寛容だからな」

 寛容。
 その言葉に、ミアルは思わず笑いをこぼした。

 ジュンの笑みが固まった。
「何がおかしい?」

「だって、寛容だなんて……面白いんですもの」

「……お前は、俺を馬鹿にしているのか?」
 ジュンは嘲笑されたと思っている。

 だが、ミアルは首を振った。死の淵にいるのを忘れるほど、ジュンの理論が本気で面白く――たまらなく愛おしかったのだ。

 ジュンは、イラ立ちとも困惑ともつかない表情を浮かべていた。

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