小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第56話 ミアルの賭け
第56話 ミアルの賭け(1/6)
チンリン山を照らしていた太陽は、山裾へ隠れ始めた。夕方の気配が、ゆっくりとやってきていた。
幕舎《ばくしゃ》の中はすでに日陰になっていて、うっすらと青い色に染まっていた。
そこでジュンがイラ立ちながら、ウロウロと歩き回っていた。
かたわらの寝台には、ジュンに毒を盛られたミアルが横たわっていた。
ミアルは、自分の意識の混濁が深くなり、呼吸が荒く変わったことに気づいた。
(末期症状だわ……。
日の傾きからすると、盛られてから5時間くらい経ってる。
となると、持ってあと1時間かしら。
日没をすぎた頃が終わりね。
――こんなところで、フェイリン殿に教えてもらった知識が役に立つなんて……彼に礼を言わなくちゃ。
いえ、カナリア妃様との橋渡しをしてあげたほうが、彼は喜ぶわね……)
ジュンは、ミアルの呼吸が荒くなったのにやっと気づいた。
「なぜ、俺にゆるしを乞わない!?
お前が一言、”すまなかった”と!
”自分が間違っていた”と!
――詫びるだけでいいのだ!
そうすれば、俺はお前を助けてやる……!」
ミアルには、ジュンの顔がぼやけて見えなかった。だが、激高する声だけははっきりと聞こえていた。
(私はあなたの愛に賭ける。
あなたにとって私が唯一無二の女なら、私が死ぬ前にあなたは折れてくれるはず。
ただのうぬぼれなんかじゃないはずよ。
そしたらふたりで異国へ逃げるの。
小さな街で、いつまでも愛しあって暮らすのよ……)
だが、ジュンは一向に折れる様子を見せない。
チンリン山を照らしていた太陽は、山裾へ隠れ始めた。夕方の気配が、ゆっくりとやってきていた。
幕舎《ばくしゃ》の中はすでに日陰になっていて、うっすらと青い色に染まっていた。
そこでジュンがイラ立ちながら、ウロウロと歩き回っていた。
かたわらの寝台には、ジュンに毒を盛られたミアルが横たわっていた。
ミアルは、自分の意識の混濁が深くなり、呼吸が荒く変わったことに気づいた。
(末期症状だわ……。
日の傾きからすると、盛られてから5時間くらい経ってる。
となると、持ってあと1時間かしら。
日没をすぎた頃が終わりね。
――こんなところで、フェイリン殿に教えてもらった知識が役に立つなんて……彼に礼を言わなくちゃ。
いえ、カナリア妃様との橋渡しをしてあげたほうが、彼は喜ぶわね……)
ジュンは、ミアルの呼吸が荒くなったのにやっと気づいた。
「なぜ、俺にゆるしを乞わない!?
お前が一言、”すまなかった”と!
”自分が間違っていた”と!
――詫びるだけでいいのだ!
そうすれば、俺はお前を助けてやる……!」
ミアルには、ジュンの顔がぼやけて見えなかった。だが、激高する声だけははっきりと聞こえていた。
(私はあなたの愛に賭ける。
あなたにとって私が唯一無二の女なら、私が死ぬ前にあなたは折れてくれるはず。
ただのうぬぼれなんかじゃないはずよ。
そしたらふたりで異国へ逃げるの。
小さな街で、いつまでも愛しあって暮らすのよ……)
だが、ジュンは一向に折れる様子を見せない。