小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第56話 ミアルの賭け(2/6)


 ミアルは忍び寄る絶望の影を振り払い、細い希望の糸を探して撚り合わせ、ジュンの命綱を必死で作っていた。
 そのために、ミアルは寝台に横たわりながらも、ジュンが折れなかった場合の計画を練り上げていた。
(私の命が尽きる前に、このかんざしでジュン様の動きを封じる。
ジュン様から解毒薬を奪い、生き延びて、彼を拘束して国外へ連れ出す。
あの金の小鳥に導かれてカナリア妃様が来てくださったら、ジュン様の動きを封じたあと、彼の命乞いをする。
妃様の目的は、陛下のお命を守ることだもの。
ジュン様の命を奪うことが目的ではないはず……)

 ミアルは、フェイリンだけが来た場合も、想定していた。
(フェイリン殿へジュン様の命乞いをしても、効くとは思えない。
それでも、わずかな希望にかけてするしか無いわ……。
フェイリン殿がラン家を狙っている理由が、ただの私怨や政敵の排除目的とは思えない。
そんな無慈悲な方なら、妃様も心を開かないはず)

 ミアルの耳には、ジュンのイラ立つ足音と息遣いが届いていた。
 それでもミアルは、計画を練り続けていた。
(ジュン様の配下には、”ジュン様の命が惜しいなら、従いなさい”と命じる。
ジュン様をこの国から離せば、帝位への執着が薄れて、私の説得を受け入れてくれるかもしれない。
もしかしたら……彼に監視を付けて、生涯屋敷に閉じ込めることになってしまうかもしれない……。
でもそれは……彼の嫌がる”犬”扱いだわ。
――まるで悪女ね、私)

 ミアルは悲しげに笑ったつもりだったが、口元は動かなかった。
(でも、禁軍が来たら……そのときは本当に終わりかもしれない。
あの方たちには、理《ことわり》しか通用しないもの。
ああ、でも――それでも……ジュン様を救ってみせる)

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