小鳥の爪―寵姫は2番目の恋に落ちる―
第5話 仇討ちの理由(5/5)
しばらくして、シャオレイは額の小鳥を指差しながら尋ねた。
「ねえ……これについて、何も聞かないの?」
ミアルはにっこりとほほ笑み、答えた。
「姫様がお話にならないことは、何も」
「私、陛下をお守りしたいの。脅威を取り除いてあげたい。――あなたも同じ気持ち?」
「もちろんです。主《あるじ》の願いは、私めの願いでございます」
シャオレイは、じんわりと感動していた。
(ミアルはわきまえてて、口が堅そうね。それに肝が据わってる。
小鳥が認めたようだし、彼女を信用しよう)
「……ここに、皇后の内通者がいたの。
他にもいるかもしれないから、使用人の総入れ替えをしたくて。
それを、あなたに頼みたいの」
「それでしたら、内侍省は信用できませんね。私自らが探してまいります」
「頼もしいわ。――ところで、一昨日の刺客事件なんだけど……正体は誰だと思う?」
「皇后殿下、もしくはラン家に恨みを持つ者のしわざと考えられますが……。
刺客はひとりで乗り込んできたので、今の政敵ではないでしょう。
罠にはめて蹴落とす方が、確実ですから」
シャオレイはふと思い出した。
前世のフェイリンは、メイレン暗殺に失敗して処刑され、城門に吊るされた。
恐ろしくてシャオレイは死体を見なかったが、宮中で噂になっていたのだ。
(そういえば、若い男なのに白髪《はくはつ》だったらしいわ。
恐怖でそうなると、聞いたことはあるけど……)
「ねえ、ラン家に恨みを持つ者の中に、白髪《はくはつ》の若い男はいないの?私達とあまり変わらない歳の……」
「――白髪《はくはつ》といえば、4年前に”白髪の鬼”が後宮に現れましたね。
羽林軍《うりんぐん※》とやりあったそうですが、逃げられたそうです。
鬼は、白い長髪を振り乱していたとか」 [※皇帝直属の軍]
そしてミアルは、12年前にラン家がユン家を滅ぼしたという噂を、低い声で語った。
「――ただ一人、ユン家の末の男子の遺体だけは、見つからなかったそうです。
生きていれば私達とさほど変わらない年頃かと……」
シャオレイは衝撃を受けつつも、訪ねた。
「その人は”フェイリン”というのかしら?」
「申し訳ありません、そこまでは私も存じ上げません」
シャオレイは考えていた。
(白髪の鬼と前世での白髪の刺客は、フェイリンと同一人物なのかしら?
そうだとしたら、何度も襲撃するほどラン家――いえ、メイレンへの恨みが深いのね)
しばらくして、シャオレイは額の小鳥を指差しながら尋ねた。
「ねえ……これについて、何も聞かないの?」
ミアルはにっこりとほほ笑み、答えた。
「姫様がお話にならないことは、何も」
「私、陛下をお守りしたいの。脅威を取り除いてあげたい。――あなたも同じ気持ち?」
「もちろんです。主《あるじ》の願いは、私めの願いでございます」
シャオレイは、じんわりと感動していた。
(ミアルはわきまえてて、口が堅そうね。それに肝が据わってる。
小鳥が認めたようだし、彼女を信用しよう)
「……ここに、皇后の内通者がいたの。
他にもいるかもしれないから、使用人の総入れ替えをしたくて。
それを、あなたに頼みたいの」
「それでしたら、内侍省は信用できませんね。私自らが探してまいります」
「頼もしいわ。――ところで、一昨日の刺客事件なんだけど……正体は誰だと思う?」
「皇后殿下、もしくはラン家に恨みを持つ者のしわざと考えられますが……。
刺客はひとりで乗り込んできたので、今の政敵ではないでしょう。
罠にはめて蹴落とす方が、確実ですから」
シャオレイはふと思い出した。
前世のフェイリンは、メイレン暗殺に失敗して処刑され、城門に吊るされた。
恐ろしくてシャオレイは死体を見なかったが、宮中で噂になっていたのだ。
(そういえば、若い男なのに白髪《はくはつ》だったらしいわ。
恐怖でそうなると、聞いたことはあるけど……)
「ねえ、ラン家に恨みを持つ者の中に、白髪《はくはつ》の若い男はいないの?私達とあまり変わらない歳の……」
「――白髪《はくはつ》といえば、4年前に”白髪の鬼”が後宮に現れましたね。
羽林軍《うりんぐん※》とやりあったそうですが、逃げられたそうです。
鬼は、白い長髪を振り乱していたとか」 [※皇帝直属の軍]
そしてミアルは、12年前にラン家がユン家を滅ぼしたという噂を、低い声で語った。
「――ただ一人、ユン家の末の男子の遺体だけは、見つからなかったそうです。
生きていれば私達とさほど変わらない年頃かと……」
シャオレイは衝撃を受けつつも、訪ねた。
「その人は”フェイリン”というのかしら?」
「申し訳ありません、そこまでは私も存じ上げません」
シャオレイは考えていた。
(白髪の鬼と前世での白髪の刺客は、フェイリンと同一人物なのかしら?
そうだとしたら、何度も襲撃するほどラン家――いえ、メイレンへの恨みが深いのね)