小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第58話 同調するためらい(5/6)


 シャオレイは、長い間葛藤していた。
 やがて――シャオレイは深く息をつき、目を閉じた。震える手で、ゆっくりと短刀を鞘に戻す。それから、自分の中衣《ちゅうい》を脱ぎ、ジュンの傷口に強く押し当てた。

 ジュンは目を開いて、眉を寄せた。
「なんなんだ……お前らは……」
 ジュンの声には、あきれが混ざっていた。それも当然だ。

 ミアルもフェイリンも、そして――シャオレイも。皆ジュンを殺そうとしたのに、結局は助けたからだ。

 軍人であるジュンには、理解不能だった。

 だが、シャオレイは「あんたなんか、助けたくない!」と、吐き捨てた。

 ジュンが、わずかに眉を上げる。

 シャオレイは今すぐにでも、ジュンの止血をやめて逃げ出したかった。だが――それを許さないのも、シャオレイ自身の意思だった。
「でも……ミアルが助けたから……。
ミアルのために、やってるのよ……勘違いしないで……!」
 シャオレイは、自分にイラ立っていた。
(私は甘い……甘すぎるわ……!
だから前世で、あっさり殺されるのよ……!)
 悔し涙をこぼしながらも、ジュンの傷を強く抑え続ける。シャオレイの手を、彼の血が赤く染めていた。

 やがて、ミアルが薬を抱えて戻ってきた。
 ジュンに指示されるまま、ミアルは焦りと不安に震える手で、傷口に薬を振りかけた。それから、上衣を傷口に押し付けて止血を続けた。
 シャオレイはそれを、ぼんやりと見ていた。――手を血に染めたまま。

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