小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第59話 自分への罰(2/5)
◆
夕陽に照らされて、川は真っ赤に染まっていたが、水はひんやりとしていた。
その中で、フェイリンは血と死の匂いが染みついた体を洗っていた。フェイリンの髪から染料が落ち、隠されていた白髪《はくはつ》があらわになっていく。
フェイリンには、むなしさだけが広がっていた。
12年間、フェイリンは仇討ちだけを支えに生きてきた。
2度のメイレン暗殺失敗の末に、ようやくラン家の一員――ジュンを追い詰めた。
だが、ジュンはユン家を皆殺しにした張本人ではない。
その上、戦いの最中にジュンがミアルへ気をとられていた。フェイリンの仇討ちなど、ジュンにとっては取るに足らないことなのだ。
そのことも、フェイリンのむなしさに拍車をかけた。
結局、フェイリンはジュンにとどめを刺せなかった。その事実が、フェイリンへ重くのしかかる。
フェイリンは大きく息をつき、川に仰向けに横たわった。そして、顔を覆ったままゆっくりと水底に沈んでいった。
◆
あたりは、夕闇に包まれ始めていた。
シャオレイは、幕舎の近くに座り込んでいた。山の冷たい空気が、シャオレイの肌にまとわりつく。
ぼんやりと視線は遠く、何を見ているのかシャオレイ自身にも分からなかった。
不意に、草を踏む音がシャオレイに近づいてきた。
町医者とその従者が、木の枝を組んだ即席の担架を運んできたのだ。
そこに横たわっていたのは、包帯を巻いている血まみれのジュンだった。そばにはミアルが付き添っている。
シャオレイは眉を寄せた。シャオレイの胸に湧き上がるのは、不快とも言い切れない、複雑な思いだった。
ミアルがシャオレイに気づき、ひざまずいた。ミアルは、地に額をこすりつけながら頭を下げる。
「申し訳ありません、カナリア妃様――」
だが、シャオレイは短く息をつき、ミアルの手を取って立ち上がらせた。
「もういいのよ……ほら、ついててあげて」
担架はそのまま、幕舎の中へ運ばれていった。ミアルはシャオレイに小さく頭を下げると、後を追っていった。
ジュンとミアルの姿が視界から消えると同時に、シャオレイに疲れがどっと押し寄せた。
シャオレイは、静かにその場を離れた。
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夕陽に照らされて、川は真っ赤に染まっていたが、水はひんやりとしていた。
その中で、フェイリンは血と死の匂いが染みついた体を洗っていた。フェイリンの髪から染料が落ち、隠されていた白髪《はくはつ》があらわになっていく。
フェイリンには、むなしさだけが広がっていた。
12年間、フェイリンは仇討ちだけを支えに生きてきた。
2度のメイレン暗殺失敗の末に、ようやくラン家の一員――ジュンを追い詰めた。
だが、ジュンはユン家を皆殺しにした張本人ではない。
その上、戦いの最中にジュンがミアルへ気をとられていた。フェイリンの仇討ちなど、ジュンにとっては取るに足らないことなのだ。
そのことも、フェイリンのむなしさに拍車をかけた。
結局、フェイリンはジュンにとどめを刺せなかった。その事実が、フェイリンへ重くのしかかる。
フェイリンは大きく息をつき、川に仰向けに横たわった。そして、顔を覆ったままゆっくりと水底に沈んでいった。
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あたりは、夕闇に包まれ始めていた。
シャオレイは、幕舎の近くに座り込んでいた。山の冷たい空気が、シャオレイの肌にまとわりつく。
ぼんやりと視線は遠く、何を見ているのかシャオレイ自身にも分からなかった。
不意に、草を踏む音がシャオレイに近づいてきた。
町医者とその従者が、木の枝を組んだ即席の担架を運んできたのだ。
そこに横たわっていたのは、包帯を巻いている血まみれのジュンだった。そばにはミアルが付き添っている。
シャオレイは眉を寄せた。シャオレイの胸に湧き上がるのは、不快とも言い切れない、複雑な思いだった。
ミアルがシャオレイに気づき、ひざまずいた。ミアルは、地に額をこすりつけながら頭を下げる。
「申し訳ありません、カナリア妃様――」
だが、シャオレイは短く息をつき、ミアルの手を取って立ち上がらせた。
「もういいのよ……ほら、ついててあげて」
担架はそのまま、幕舎の中へ運ばれていった。ミアルはシャオレイに小さく頭を下げると、後を追っていった。
ジュンとミアルの姿が視界から消えると同時に、シャオレイに疲れがどっと押し寄せた。
シャオレイは、静かにその場を離れた。