小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第60話 逃げられないほどの、まっすぐな愛(3/4)


 ミアルはジュンの顔を、ゆっくり――だが強引に振り向かせた。それから、そっと唇を重ねた。

 その口づけに、ジュンの目が揺れる。

「私は、あなたに生きていてほしいだけ。
そして――陛下たちにも」

「……ユン・フェイリンはどうした?」

「彼はただの同志よ。
それに、フェイリン殿が慕っているのは……カナリア妃様だから」

 ジュンは眉を上げたまま、しばらく天井を見ていた。
 やがて、ぽつりと言った。
「皇帝の女に手を出すとは……よくやる」
 皮肉の裏にある感情に、ジュン自身は気づいていなかった。
 それは、安堵だった。――ミアルがフェイリンのことをなんとも思っていないことへの。

「……なぜ、俺に執着する?」
 ジュンの声には、どこか不安げな響きがあった。
 ジュンは、”ミアルから愛されている”という確信が欲しくて仕方ない。だが、それを口に出すのはあまりにみじめすぎて、できなかった。

 ミアルは静かにほほ笑み、ぽつりと答えた。
「ジュン様は面白いもの。
――離れられないわ」

 ジュンは一瞬、戸惑ったような顔をしてから、皮肉めいた笑みを浮かべた。
「面白いか……?このザマが」

「あなたにとっては休憩のようなものでしょうけど、私には特大の催し物だわ。
あなたが立ち上がるまでを、つぶさに観察するの。
……間近で、じっくりと。
楽しみだわ……こんな大きな傷、どんなふうにふさがっていくのかしら?」
 ミアルは安心したように、ジュンの胸元に目をやりながら、うっとりとした。

「傷はたいして深くない……。
あいつに斬られる瞬間、体を沈ませて回避したからな。
下手くそだな、あいつ」

 毒舌を吐くジュンへ、ミアルは困ったように笑った。だが――嬉しかった。

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