小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第61話 休戦協定(2/5)
◆
幕舎の中では、ジュンが寝台に横たわっていた。
シャオレイたちが入ってくると、ジュンは目をうっすらと開けて見た。
「負傷しているゆえ、このままで失礼する」
そう言って、横たわったまま拱手《きょうしゅ》をした。
「カナリア妃、ユン殿。そなたたちに命を拾われた。礼を言う」
ジュンは、感情の一切入っていない声で、極めて形式的に済ませた。それから、手を下ろして再び目を閉じた。
シャオレイはあっけにとられ、フェイリンは腕を組んだまま冷めた目をしている。
ミアルだけが、少し気まずそうに視線を落としていた。
しばしの沈黙の後、シャオレイが作り笑いを浮かべた。
「ラン殿が早くご回復なされますよう、お祈りいたしますわ」
フェイリンは、不満げに息をついて無愛想に言った。
「ラン殿、どうぞご自愛なされますよう」
ねぎらうふたりへ、ミアルは頭を下げた。
「お気遣い、感謝いたします。夫に代わりまして、お礼申し上げます」
夫――その言葉はジュンには予想外だったのだろう。
ジュンは目を丸くして何かを言いかけたが、すぐにまた目を閉じた。ただ静かに、その言葉を受け入れた。
シャオレイもフェイリンも眉を上げていた。
やがて、シャオレイが言った。
「どうぞ、ラン殿とミアルが添い遂げられますよう。――おふたりが共白髪《しらが》になるまで」
誰もが、本音を語らなかった。
誰もが、正義を主張しなかった。
誰もがただ形式に従い、演じた。
――それは、休戦協定だった。
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幕舎の中では、ジュンが寝台に横たわっていた。
シャオレイたちが入ってくると、ジュンは目をうっすらと開けて見た。
「負傷しているゆえ、このままで失礼する」
そう言って、横たわったまま拱手《きょうしゅ》をした。
「カナリア妃、ユン殿。そなたたちに命を拾われた。礼を言う」
ジュンは、感情の一切入っていない声で、極めて形式的に済ませた。それから、手を下ろして再び目を閉じた。
シャオレイはあっけにとられ、フェイリンは腕を組んだまま冷めた目をしている。
ミアルだけが、少し気まずそうに視線を落としていた。
しばしの沈黙の後、シャオレイが作り笑いを浮かべた。
「ラン殿が早くご回復なされますよう、お祈りいたしますわ」
フェイリンは、不満げに息をついて無愛想に言った。
「ラン殿、どうぞご自愛なされますよう」
ねぎらうふたりへ、ミアルは頭を下げた。
「お気遣い、感謝いたします。夫に代わりまして、お礼申し上げます」
夫――その言葉はジュンには予想外だったのだろう。
ジュンは目を丸くして何かを言いかけたが、すぐにまた目を閉じた。ただ静かに、その言葉を受け入れた。
シャオレイもフェイリンも眉を上げていた。
やがて、シャオレイが言った。
「どうぞ、ラン殿とミアルが添い遂げられますよう。――おふたりが共白髪《しらが》になるまで」
誰もが、本音を語らなかった。
誰もが、正義を主張しなかった。
誰もがただ形式に従い、演じた。
――それは、休戦協定だった。