小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第10話 誘う歌声(2/6)




 その夜、シャオレイはひとり舞いながら考えていた。
(前世での七夕の宴の皇后の違和感……何だったかしら……。
すぐに思い出せないということは、取るに足らないことなのかも……)
「ねえ、何か知らない?」

 額の小鳥は沈黙している。シャオレイは息をついて、寝台へ横たわった。
(あの時点では、フェイリンは処刑されてしまった後だったのよね……)

 フェイリン。
 その名をシャオレイが思い出した瞬間、昼間の出来事がよみがえってきた。

(彼の唇……少し荒れていた。
女遊びしていない証しね。遊ぶ男は、手入れをしているもの。
太ももで捉えた瞬間、彼の筋肉がきゅっと引き締まったわ。
……そういえば、脇腹の傷に当たっていたかも。大丈夫だったのかしら?
つま先でなぞった腰……ゾクリと震えてたわね……)

 フェイリンの乱れた髪、伏せた目、冷静を装った口ぶり――。
 昼間の楽しい狩りを思い出して、シャオレイはくすくすと笑っていた。
 だが、ふと疑問が湧いた。
「あら……?」

 普通なら、あんなふうに女に屈されて黙っていられる男はいない。
 恥をかかされた男が激高して女に手を上げる姿を、シャオレイは青楼で何度も見てきた。

(あれだけのことをしたのに、フェイリンは怒らなかった。……どうして?)

 フェイリンはシャオレイにおとなしく従い、さらには、彼女と一緒に名簿を眺めて、冷静に宴の話をしていた。

(初対面のときのように、私へ刀を向けてもおかしくないのに……。――変な人)
 シャオレイがそう思ったとたん、胸の奥がほんのり温かくなった。

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