小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第11話 嫉妬の旋律(2/6)


 フェイリンは自負していた。――刺客として冷静で理性的だと。
 だが、実際の彼は、欲情のままに流されている。
 フェイリンは、自分を愚かだと分かっていたが、止められなかった。
(なぜ俺は、この女にこんなに執着する?)
 答えは出ないが、彼にとってひとつだけ確かなことがある。

 シャオレイに触れたい。
 強く、深く。

 それがどれだけ危うい感情なのか、フェイリンには分かっていた。
 だが、彼は足を踏み出さずにはいられなかった。――たとえ沈むと分かっていても。

「……っ!」
 シャオレイが小さく悲鳴を漏らすと、彼が一瞬だけ動きを止める。

「私は小鳥なんだから……優しくして」
 甘くたしなめるようにささやくと、フェイリンの腕が緩んだ。
 シャオレイは薄くほほ笑んで、その隙に彼の頬を撫でた。
「ね?」

 フェイリンはシャオレイの手を取り、じっと見つめた。細い指先に、小さな桃色の爪が光っている。
(小さい……それに、か弱い。
それなのに守ろうというのか……ダン・ゼフォンを。
――刀すら振るえない手で)
 フェイリンは、シャオレイの指先にそっと口づけをした。
 それから手のひらに移り、やがて手首へたどりつくと、翡翠色の腕輪が覗いた。ゼフォンからの贈り物だ。
 それを、フェイリンがにらみつけた瞬間――

 茶器が床に落ちて割れる音が響いた。

 ふたりが振り返ると、ミアルが立ち尽くしていた。
 ミアルはゼフォンがまだ滞在していると思って、お茶を持ってきたのだった。だが、彼女の目がとらえたのは――主《あるじ》と見知らぬ宦官の抱き合う姿だった。
 ミアルは目を丸くしていたが、すぐに冷静さを取り戻した。頭を下げ、そそくさとその場を立ち去った。

「待って!」
 シャオレイは、あわててミアルを追いかけた。

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