小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第14話 皇后の影(3/5)




 宴会場には、大きな拍手と歓声が鳴り響いていた。歌姫自ら作り上げた歌舞は物珍しく、文化人たちの注目を一身に浴びた。

 シャオレイは席に戻る途中で、皇太后に褒められた。

「カナリア姫……素晴らしかったわ。
星空のきらめきみたいよ」

「皇太后殿下にお褒めいただき、光栄ですわ」

 それから、シャオレイはゼフォンの隣へと戻った。反対側の離れた場所には、悠然と座るメイレンがいた。

 ゼフォンは、満足げに盃を傾ける。
「素晴らしかった。そなたは多才だな」

「陛下に褒められて光栄です」

 元歌妓のシャオレイへ冷ややかな視線を向ける者もいたが、そんなことはどうでも良かった。
(文化人たちの反応は上々だった。
彼らの目に留まれば、名家の養女になれるかもしれない。
そうすれば、妃への昇格も夢ではないわ。
地位を固めて力を付けられる)

 ゼフォンに勧められて、シャオレイは酒を飲んだ。
(フェイリンは、もう宴会場に潜入しているのかしら?
計画を実行し始めている頃よね)
 シャオレイは、会場の見取り図や演目の目録や順や席次の情報をフェイリンに渡し、”予言”までした。
 だが、彼女には何かが引っかかっていた。予言したときに抱いた違和感の正体が、未だにつかめないからだ。
 シャオレイは不安を振り払った。
(彼だって馬鹿じゃないんだから、前回のような失敗はしないはずよ)

「なんだ、あまり食べておらぬな」
 突然ゼフォンの声が響いた。ぼんやりしているシャオレイを心配したのだ。

「歌舞の緊張がまだ解けなくて……」

 シャオレイが小さく答えると、ゼフォンは「繊細だな」と笑った。それから、料理を箸でシャオレイの口元へと運んでやった。
「ほら」

 シャオレイは少しためらいつつも、差し出された料理を口にした。周囲の妃たちから、嫉妬と羨望の混ざった視線がちらりと向けられる。
 シャオレイは静かに咀嚼《そしゃく》しながら、額の小鳥をそっと撫でた。
(小鳥がおとなしいということは、危機は迫っていないようね)
 ひと安心して、手巾で口元を拭う。

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