小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第15話 苦渋の決断(5/5)


「姫を離せ!」

 ゼフォンの叫びに、シャオレイはハッと我に返った。

 いつの間にかゼフォンは馬に乗って現れて、臣下も集まっていた。

 フェイリンが叫んだ。
「門を開けろ!でなければ、この女を殺す!」

 臣下たちは、口々に反対意見を叫んでいる。
「刺客をけっして許してはなりませぬ!」
「陛下、ご決断を!!」

 ゼフォンはためらっていた。
(皇族に手を出した者を、逃がすわけにはいかぬ!
だが、カナリアを失いたくはない……!)
 決断を迫られてゼフォンは、フェイリンとシャオレイを交互に、苦しそうに見つめた。

 シャオレイは、ゼフォンがためらう姿に静かに衝撃を受けていた。
(そうね……私よりも皇族の命のほうが遥かに重い。
陛下は何も間違ってはいないわ。けれど――)

「なりませんぞ……陛下」
 重く澄んだ声が、夜の空気を震わせた。
 声の主は――メイレンだった。誰もが殺されたと思っていた彼女が、輿に乗ってそこにいた。

 ゼフォンの顔が驚きに染まる。
「そなた……なぜ!?」

 メイレンはほほ笑んだ。
「あれは、私の”影”です」

 ゼフォンは合点《がてん》がいった顔をした。
 しばらく思案して、やがてゆっくりと手で合図する。
「……通してやれ」
(倒されたのが偽者であれば、今ここで寵姫を失う必要はない)

 だが、臣下たちは非難の目をゼフォンに浴びせた。それでもゼフォンは、シャオレイの命《いのち》を選んだ。

 刺客に連れ去られていくシャオレイを見送るゼフォンは、悲痛な表情を浮かべていた。彼女がどんな目に遭うか――ゼフォンは、想像したくはなかった。

 ゼフォンを見て、シャオレイは胸を痛めた。
(ごめんなさい。私は必ず無事に戻ってこれるから、心配しないで……)
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