小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第2章 義兄妹
第16話 ずるさへの滑落
第16話 ずるさへの滑落(1/5)
◆
逃亡の最中に、シャオレイはどこかの家の夫人のような衣《ころも》に着替えた。フェイリンは御者に変装し、馬車で城下町を抜ける。
途中で兵の検問があったが、フェイリンが賄賂を渡したおかげで、すんなり通れた。
それから林に馬車を捨て、ふたりは馬で逃げた。
◆
長い逃亡の末にシャオレイたちは、郊外の森の奥深くにあるフェイリンの隠れ家へと辿り着いた。すでに、真夜中だった。
廃屋のような小屋の中はほこりっぽかったが、最低限の生活感はあった。
「ふう……」
椅子に腰かけたシャオレイに、自然とため息が漏れた。
シャオレイへ、フェイリンが水を差し出して言った。
「怪我は?」
シャオレイは首を振りながら、水筒を受け取った。疲れで、一言も話す気力が無かった。一気に飲み干すと、ひからびた体に染み渡った。
「寝ろ」
フェイリンはそう言い残し、小屋を出ていった。
シャオレイは、フェイリンの背中を見送った。
(ようやく倒した皇后が、影武者だったことに落胆しているのね。
無理もないわ……)
権力者が影武者を使うことを、シャオレイは知っていた。だが、メイレンがそこまでするとは予想していなかった。
(一筋縄ではいかないわね……)
シャオレイは、よろよろと寝台へ行った。そこに横たわって目を閉じると、今夜の出来事が次々と脳裏に浮かんでくる。
自分の歌や舞が、客人の注目を集めたこと。
メイレンが影武者だったこと。
フェイリンが暗殺を決行したこと。
自ら人質を装い、フェイリンを助けたこと。
そして――自分が殺されそうになったとき、ゼフォンがためらったこと。
(いくら私が寵愛されていても、皇帝が国よりも優先するわけがないわ。
仕方ないわよ。
でも、最終的にはゼフォンは私の命を選んで、逃がしてくれた。
それが彼の愛の証し……)
シャオレイはそう自分に言い聞かせたが、なんとなく胸の奥が重かった。大きく息をつく。
(私ったら、自分のことばっかり。
きっと、ゼフォンは臣下に非難されたわ。
入宮したときもそう。私が歌伎だったから、ゼフォンはずいぶん非難された。
また彼を矢面に立たせてしまった……ごめんなさい。
でも、すべてはあなたの命を守るためなの――)
シャオレイはゼフォンに詫びながら、深い眠りについた。
◆
逃亡の最中に、シャオレイはどこかの家の夫人のような衣《ころも》に着替えた。フェイリンは御者に変装し、馬車で城下町を抜ける。
途中で兵の検問があったが、フェイリンが賄賂を渡したおかげで、すんなり通れた。
それから林に馬車を捨て、ふたりは馬で逃げた。
◆
長い逃亡の末にシャオレイたちは、郊外の森の奥深くにあるフェイリンの隠れ家へと辿り着いた。すでに、真夜中だった。
廃屋のような小屋の中はほこりっぽかったが、最低限の生活感はあった。
「ふう……」
椅子に腰かけたシャオレイに、自然とため息が漏れた。
シャオレイへ、フェイリンが水を差し出して言った。
「怪我は?」
シャオレイは首を振りながら、水筒を受け取った。疲れで、一言も話す気力が無かった。一気に飲み干すと、ひからびた体に染み渡った。
「寝ろ」
フェイリンはそう言い残し、小屋を出ていった。
シャオレイは、フェイリンの背中を見送った。
(ようやく倒した皇后が、影武者だったことに落胆しているのね。
無理もないわ……)
権力者が影武者を使うことを、シャオレイは知っていた。だが、メイレンがそこまでするとは予想していなかった。
(一筋縄ではいかないわね……)
シャオレイは、よろよろと寝台へ行った。そこに横たわって目を閉じると、今夜の出来事が次々と脳裏に浮かんでくる。
自分の歌や舞が、客人の注目を集めたこと。
メイレンが影武者だったこと。
フェイリンが暗殺を決行したこと。
自ら人質を装い、フェイリンを助けたこと。
そして――自分が殺されそうになったとき、ゼフォンがためらったこと。
(いくら私が寵愛されていても、皇帝が国よりも優先するわけがないわ。
仕方ないわよ。
でも、最終的にはゼフォンは私の命を選んで、逃がしてくれた。
それが彼の愛の証し……)
シャオレイはそう自分に言い聞かせたが、なんとなく胸の奥が重かった。大きく息をつく。
(私ったら、自分のことばっかり。
きっと、ゼフォンは臣下に非難されたわ。
入宮したときもそう。私が歌伎だったから、ゼフォンはずいぶん非難された。
また彼を矢面に立たせてしまった……ごめんなさい。
でも、すべてはあなたの命を守るためなの――)
シャオレイはゼフォンに詫びながら、深い眠りについた。