小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第16話 ずるさへの滑落(2/5)




 シャオレイは、ふと目を覚ました。
 夜明け前のまだ薄暗い小屋の中を見回したが、フェイリンはどこにもいない。

 シャオレイがそっと外に出ると、森には朝もやが立ち込め、静けさが広がっていた。
 シャオレイは川の水で顔を洗った。ひんやりとした感触が心地よい。
 不意に、下流から馬のいななきが聞こえた。シャオレイは、とっさに茂みに身を隠して様子をうかがう。

 もやの中に浮かび上がったのは、馬と――全裸の男だった。男は腰まで川に浸かりながら、馬の身体を洗っている。
 シャオレイには後ろ姿しか見えないが、男の引き締まった腕に血管が浮いていた。水滴が、男の背中の筋肉に沿って流れてゆく。そこには、いくつかの古傷があった。

 シャオレイは、分析していた。
(若い男ね……追手の兵?それとも、フェイリンかしら?
あの鍛え上げられた体は、相当な手練《てだ》れだわ)

 もやが晴れていく。

 男が髪をかきあげて体の後ろに回すと、その白髪《はくはつ》があらわになった。

 シャオレイは目を丸くしながら、思い出していた。
(前世で処刑された白髪《はくはつ》の刺客――そして今世で4年前に出没した、白髪の鬼……。まさか――)

 男が体の向きを変えると、その顔がはっきりと見えた。
 その男は、フェイリンだった。漆黒だった彼の髪は、真っ白だった。

 シャオレイが息をのんだ。
(やっぱり白髪の刺客はフェイリンだった。おそらく、白髪の鬼も……)

 その瞬間、フェイリンが視線に気づき、素早く飛刀《ひとう》を投げた。シャオレイのすぐそばの木に、鋭い刃が突き刺さった。

 シャオレイは両手を上げ、「待って!」と言いながら、茂みから飛び出した。

 フェイリンの目が、驚きに見開かれた。

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