小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第16話 ずるさへの滑落(3/5)




 隠れ家の裏庭は、朝の光に包まれていた。

 シャオレイとフェイリンは、大きな石に座ってたき火を囲んでいる。たき火の上では、鳥肉があぶられていた。

 フェイリンは胡服《こふく※》に身を包み、白髪《はくはつ》を後ろで束ねていた。 [※異民族の着る服。動きやすく、騎馬に適する]

 シャオレイは、フェイリンの髪が気になってはいたものの、触れなかった。
「ねえ……これからどうするの?」

 シャオレイに問われ、フェイリンは鳥肉をくるりと回しながら答えた。
「今しばらくは、暗殺を諦めるのが賢明だな」
 彼の声はどことなく沈んでいる。

「そうね……」

 フェイリンは焼けた鳥肉を2つに割り、シャオレイに分けた。

 シャオレイはちょっと考えてから、懐から手巾に包んだ飛刀を取り出した。さっきフェイリンに投げつけられた飛刀だ。それを使って、肉を削ぎながら食べ始めた。

 肉をかじっていたフェイリンがシャオレイを見て、表情をわずかに曇らせた。

 それに気づいたシャオレイは、飛刀をフェイリンに返そうとした。

 フェイリンはぶっきらぼうに「使え」と言った。

 シャオレイは飛刀で食事を続けながら、ぽつりと尋ねた。
「……怒ってないの?」

「何をだ?」

「メイレンが影武者だったと、“予言”できなかったわ」

「予言も万能じゃないだろう」
 フェイリンはあっさりと言い放った。それが、シャオレイには意外だった。

「もっと責められるかと思った」

「そなたのせいじゃない」

 フェイリンは自省していた。
(完全に俺の失態だ。
以前こいつに指摘された通り、俺は焦っていた。
それをきっと、メイレンにも見抜かれていた。
――俺が焦っていた大きな理由は、こいつに溺れてしまいそうだったからだ。
情けない……)

 ふたりに沈黙が続く。

 パチパチという焚き火の音と、小鳥のさえずりだけがこだましていた。

 フェイリンはそれをぼんやりと聞いていた。
(また、生き延びてしまったな……一族の無念を晴らせなかった証しだ。
だが――)
 フェイリンの目に、シャオレイが映る。彼女のゆるく結い上げた髪が、憂いを帯びた顔を縁取っていた。
(また、こいつに会えた……)

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