小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第17話 義兄妹の契《ちぎ》り(5/5)


 フェイリンが指先の軟膏を彼女の背中に塗った瞬間――

「冷たっ」
 シャオレイの短い言葉と共に、白い肌が跳ねた。

 ただそれだけのはずなのに、フェイリンの指先は妙に熱を持った。だが――熱いのは、指先だけじゃなかった。このままでは、何かがあふれてしまう。

 シャオレイは、違和感を覚えていた。
 フェイリンの指使いが妙に慎重すぎる上に、重苦しい空気を背後から感じる。
「ねえ、フェイリン――」

「兄と呼べ」
 フェイリンが、低く遮った。

「え?」
 シャオレイが不審げに振り返る。

 フェイリンは、彼女をにらんだ。
「俺はそなたの義兄だ。だから……”兄”と呼べ」

 シャオレイにそう言われれば、きっとこの昂ぶりは収まる。――フェイリンは、そう信じていた。

 シャオレイは、あきれたように息をついた。
(理性が強い割には、情欲も強いのね。
じゃあなんで抱かないの……?わけが分からない)
「……”兄さん”は、大丈夫なの?
私が昨日、琴で殴っちゃったけど」

 ”兄さん”
 たったそれだけの言葉で、フェイリンの内側が、すっ……と鎮まっていく。衝動は消えた。理性は戻った。――呼吸が整った。
「俺はそんなにヤワじゃない」

 偉そうなフェイリンの口調に、シャオレイは、ようやくいつもの彼が戻ってきたと感じた。
「そうね……あなたに突き飛ばされたくらいで、アザができる私とは違うもの」

「――すまなかった」
 シャオレイが「意外と素直ね」と思ったのもつかの間、フェイリンが続けた。

「だが、そなたはもっと鍛えろ。
そうすれば、多少の衝撃ではアザにならん。
……終わったぞ」

 シャオレイはムッとしながら、衣を直した。
(本当に、いつものフェイリンだわ。
余計な一言が多い)
「そうね。
あなたみたいに引き締まった、たくましい体になりたいわ。
そうそう、脇腹の傷は完治したのね、良かったわ」

 そう言われて、フェイリンは川で彼女に全裸を見られたことを思い出した。一瞬、背すじが凍るほどの羞恥が襲い、次に、妙な昂ぶりが胸をかすめる。
 フェイリンは、シャオレイの両肩に手を置いて、たしなめた。
「我が妹よ、慎《つつし》みを持て。
女子《おなご》が男の体について話すものじゃない」

 シャオレイは困惑した。
(これ……まさかずっと続けるの?)

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