小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第18話 義兄《あに》としての務め

第18話 義兄《あに》としての務め(1/3)




 隠れ家の前で、フェイリンとシャオレイが立ち話をしていた。
 シャオレイは、七夕の宴で着た衣に着替えている。そこには、メイレンの影武者の返り血が付いていた。

 フェイリンが、小さな筒に入った文《ふみ》をシャオレイへ渡して言った。
「皇帝に再会したら、すぐにこれを渡せ」

「分かったわ」

「ここに来る途中で村が見えただろう?そこへ助けを求めろ。
案ずるな、離れてついて行ってやる」

「ありがとう。――ちょっと、手を出して」
 シャオレイは袖口から取り出した手巾を、フェイリンの手のひらにふわりと乗せた。

 その感触に、フェイリンの指先がわずかにぴくりと動いた。

 それからシャオレイは、銀のかんざしをするりと抜き、手巾の上にそっと置いた。かんざしに残ったわずかな体温が、フェイリンに伝わる。

 シャオレイは白い首すじをかすかに傾け、耳飾りを外した。
「これ、処分してほしいの。
刺客に差し出して、命乞いしたことにするから」
 そう言って、フェイリンの手のひらに乗せた。

「……それがいい。皇帝はきっと疑う」

 ゆっくりと手巾を包むシャオレイの指先の動きは、どこか艶めいていた。

 フェイリンの視線は、そこに吸い寄せられていた。

「これ私が作ったのよ、宴のためにね。気に入るのがなくて……」
 その声はやわらかく、どこか湿り気を帯びていた。シャオレイは、フェイリンの恋心を煽っていた。

 だが、フェイリンには“挑発”に思えた。
(またこの女は、性懲りもなく……)

「じゃあ行くわ。兄さんも、気を付けてね」

 兄さん。
 シャオレイのその言葉で、フェイリンは一気に現実に引き戻された。だが、素っ気なく返す。
「妹よ、そなたもな」

 シャオレイは森の出口へと向かっていった。

 その背中を見ながら、フェイリンは手の中のシャオレイの”分身”に視線をやった。
 ほんのりと甘い匂いが鼻をかすめた途端、欲情が顔を覗かせる。
 フェイリンはそれを押し込めるように、装飾品を乱暴に胸元へと仕舞った。

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