結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない
「あの、榊原さん。私がこの人の代わりにCEOの秘書になるって無理なんでしょうか?」
「秘書かぁ。特別な資格とかいるのかな」
「資格とか、今の秘書さんは持っていないって」
 そんなこと知らないけれど。

「そうなの? じゃあ、立候補してみたらどう? 部長に言ってみたら?」
「榊原さんに推薦してもらうとか、無理ですかぁ?」
 あざとい角度で見上げると、榊原の喉がゴクッと動くのが見えた。

「あの、私、たぶん加賀さんとお別れするし、榊原さんのこと素敵だなとずっと思っていたし……」
「それって……」
「今日の夜、食事とか、……そのあととかどうですか?」
 小声で恥ずかしそうに告げると、榊原の耳まで赤くなっていることが確認できる。

「推薦くらい全然するよ」
 簡単に落ちた榊原を心の中で笑いながら、心愛は「うれしい」と榊原に微笑んだ。

    ◇

「……秘書の募集はしていません」
 経理部長から秘書を交代させてはどうかと提案された夏目は、提案書を見ながら苦笑した。

 工藤沙紀の代わりに上野心愛を秘書にしてはどうかと書かれた書類には、先日の写真が添付され、業務時間中にカラオケに行くような社員は処罰するべきだと書かれていた。
 写真の人物は秘書課の工藤沙紀と営業部の加賀大輝。
 加賀は外回りのため社外にいたとしてもおかしくないが、秘書はおかしいというコメントに夏目は呆れた。

「この写真から、上野心愛を秘書に提案される理由がわかりません」
「上野は今年入社したばかりの若い子だが、とてもやる気があって、本人もCEOの秘書をやりたいと希望しています」
「やりたいだけでは務まりません」
「ですが、秘書の業務をしない者よりは新人の方がマシでしょう」
 経理部長の提案書を書類の一番上に置いた夏目は、時計を確認する。

「書類は一旦お預かりしますが、コメントは差し控えさせていただきます」
 軽く会釈し、夏目は秘書室へ急ぐ。
 CEO室ではなくほとんどの時間を秘書室で過ごしている暁良に、経理部長から渡された提案書を夏目は見せた。

「このためだったのか」
「そのようです。工藤さんから上野心愛に送信するなんて変だと思いました」
 経理部長が持っているということは、他の部長たちにも共有されている可能性があると夏目は危惧する。
 書類を見ながら暁良は盛大な溜息をついた。

「次の会議、沙紀は出なくていい」
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