恋心はシェアできない
そう私は自分に自信がない。それは物心ついたときからずっとそうだった。何をしても、平凡な子供で親から叱られた記憶もあまりないが、褒められた記憶もない。

私は一人っ子で教師をしている両親に育てられたのだが、両親ほどに勉強ができたわけでもなく、ピアノやバレエといった習い事も人並み程度で才能はなかった。

「前、話してくれたご両親のこと?」

「……それもあるのかもね」

はじめは私に期待して、教師の道を勧めてくれていた両親だったが、いつからか“自分のすきなことを”と言ってくれるようになった。

真意は聞いていないからわからないけれど、なんだか見放された気持ちになったのを思い出す。

「私って平凡だから……なんだろう。親の希望通りに教職についてたらまた違ったのかなって思うことはあるかな」

「…………」

今の会社に就職が決まったときも、両親はおめでとうと言ってくれたが、本当は教師になれなかった私にガッカリしていたかもしれない。

さらに社会人になってからは漠然と“みんな”みたいになりたいのになれない、さらには企画が通らないことも相まって自分がなんとなく劣っているように思えて仕方なくて、自己肯定感は下がる一方だ。


「咲希?」

「なんだろう……自信ないのは、劣等感みたいな感じかな」

「誰に対して?」

「……なんとなく周りの見て、そんな気がして……いまは碧生に対してもかな」

(だって私は碧生には全然似合わない)

梓は長い髪を掻き上げながら、顎に手を添える。

「……なんかわかるような、わかんないような。要は碧生にふさわしくないとか、そんなかんじ?」

「うん。そんな感じ」

「はぁあああ。なんでそっちになるのかなぁ。恋愛と仕事は違うじゃない」

「違うけど……でも仕事ができないうちは恋愛もなって」

「あのね、昭和じゃないんだから。もっと自分に甘くしてあげな」

梓が口を尖らせる。

「咲希のいいところは真面目で責任感が強いところと、優しくて繊細なところ。他にも掃除はプロ並みだし気遣いなんて社内で一番だと思ってるし」

「なに急に?」

「ぜーんぶ、私が持ってないモノだよ」

(梓……)

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