恋心はシェアできない
軽快なLINEの通知音に、私はデスクの上のスマホに目を移す。
見ればグループLINE名『タマコの家』にメッセージが入っている。
『タマコの家』というのは私が住んでいるシェアハウスの名前だ。
大家さんの名前がタマコさんで古民家を改装した築三十年の二階建て平屋に、二年前から私は同期たちと四人で住んでいる。
同期入社で同じ営業所に配属された私たちは終業後飲みに行くうちに、すぐに気の置けない仲になった。
東京の家賃が高いこともあり各々の得意分野で家事を分担することを前提に四人で暮らしているのだ。
(今日もご飯いらない感じかな)
案の定、グループLINEにメッセージを送ってきたのは経理部に所属している三ツ瀬梓だった。
美人なのに気取ったところがなく、サバサバしている性格の梓とはすぐに仲良くなり、いまでは親友と呼べる間柄だ。
──『今日も二人で飲んで帰りまーす』
そのメッセージに私は口元を緩めた。“二人”というのは梓の恋人の鳴瀬翔太郎のことだ。
(仲いいな)
私はすぐに梓のLINEにリアクションを送る。梓は同じく同期でシステムエンジニア部に所属している彼と三ヶ月前から交際を始めた。翔太郎君もこの『タマコの家』の住人のひとりだ。
「じゃあ、今日は“アイツ”とふたりきりか……」