恋心はシェアできない
途端に気持ちがそわそわしてくる。
共有スペースであるリビングの壁掛け時計はまもなく二十一時になろうとしている。
(営業先から直帰だから、そろそろだよね)
「──咲希、頭かかえてどうした?」
「え……っ」
聞き慣れた低い声に視線を上に上げれば、買い物袋を抱えている“アイツ”と目が合って私は思わず目を見開いた。
「え、碧生、いつの間に……」
彼の名前は永井碧生。『タマコの家』の住人で私と同じ部署の営業マンだ。
大学までサッカーをやっていたとかで爽やかな見た目に高身長で人当たりもいい。しゃべりも達者で嫌みもなく、人なつっこい。彼のまわりにはいつも自然と人が集まってくる。
いわゆる、人たらしと呼ばれる部類の人間だ。
「なに驚いてんの?」
「いや、別に」
「てか翔太郎たち遅いから鍵しめとけよ」
「もうすぐ碧生帰ってくるから、いっかって」
「こら。危ないな」
碧生が私の額を痛くない程度にコツンと突く。
「次から閉めとくように」
「わかった……。あ、今日の商談どうだったの?」
彼が買ってきた食材を冷蔵庫にいれるのを見ながら声を掛ける。
「ああ。なんとか取れたよ」
「すご……あの会社、今まで別の会社にしか広告頼まなかったよね」
「うん。部長から絶対取ってこいって言われてたし、ほっとしてる」
「おめでとう」
「おう」
碧生が切長の目を細めて唇を引き上げる。
(すごいな、どんどん私より先に行っちゃう)
共有スペースであるリビングの壁掛け時計はまもなく二十一時になろうとしている。
(営業先から直帰だから、そろそろだよね)
「──咲希、頭かかえてどうした?」
「え……っ」
聞き慣れた低い声に視線を上に上げれば、買い物袋を抱えている“アイツ”と目が合って私は思わず目を見開いた。
「え、碧生、いつの間に……」
彼の名前は永井碧生。『タマコの家』の住人で私と同じ部署の営業マンだ。
大学までサッカーをやっていたとかで爽やかな見た目に高身長で人当たりもいい。しゃべりも達者で嫌みもなく、人なつっこい。彼のまわりにはいつも自然と人が集まってくる。
いわゆる、人たらしと呼ばれる部類の人間だ。
「なに驚いてんの?」
「いや、別に」
「てか翔太郎たち遅いから鍵しめとけよ」
「もうすぐ碧生帰ってくるから、いっかって」
「こら。危ないな」
碧生が私の額を痛くない程度にコツンと突く。
「次から閉めとくように」
「わかった……。あ、今日の商談どうだったの?」
彼が買ってきた食材を冷蔵庫にいれるのを見ながら声を掛ける。
「ああ。なんとか取れたよ」
「すご……あの会社、今まで別の会社にしか広告頼まなかったよね」
「うん。部長から絶対取ってこいって言われてたし、ほっとしてる」
「おめでとう」
「おう」
碧生が切長の目を細めて唇を引き上げる。
(すごいな、どんどん私より先に行っちゃう)