恋心はシェアできない
「もう、近いよっ」

「すごい深刻な顔してたけど?」

「な、なんでもない」

「ふうん。じゃあ、食べよ」

私たちは手を合わせるとすぐに食事を始める。

「んんっ、おいし~」

思わずそう声が漏れ出てしまうほどに碧生の作るオムライスは絶品だ。

「だろ。弟たちにも一番人気なんだよ」

「碧生って何人兄弟だっけ?」

「四人」

「え、四人?!」

「ちなみに俺が長男。言ってなかったっけ?」

碧生がビール缶のプルタブを開け、喉をゴクゴクと鳴らす。

「弟が居るっていうのは知ってたけど、四兄弟は知らなかった」

「そっか。俺の親、離婚してて母親が働きに出てたから料理は俺が作っててさ」

(離婚……)

知らなかった。でも碧生が面倒見がよく、料理が上手な理由がよく分かった気がする。

「だから上手なんだね」

「まぁ、元々食べるのが好きなのもあるけどな。でも料理して誰かにおいしいって言って貰えるのってなんか癖になんの」

そこまで言った碧生がふいに私を見てククッと笑う。

「え? なに?」

「はやっ。もうなくなるじゃん」

その言葉に自分のプレートを見れば、オムライスは最後の一口だ。

「だって、お腹空いてたから……」

すごくおいしかったからって言えたらいいのに。ついでに作ってくれてありがとうも。

「作りがいあるよね。咲希ってほんと何作ってもうまそうに食うしな」

「ど、どうせ万年ダイエット組ですよー」

「いいじゃん、健康的で」

「あ、それもセクハラ」

「褒めてんの」 

「嘘ばっか」

「照れ屋だね〜」

「もう……っ」

私がわざと睨んで見せると彼がいたずらっ子みたいに笑う。

(碧生ってほんと話すの上手だな)

微妙な返答をしてもいつのまにか、そんなことなかったような会話のやり取りにすり替わっている。


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