ハイスペ御曹司で年下幼馴染の山田一郎が誘ってくる送迎を断ったら、とんでもない目に遭った件

断らなきゃ

自分の気持ち、ぐらぐらしまくりだよ……!

私は頭の中で自分のほっぺたをピシャリとたたいた。

ここは心を鬼にしなくっちゃ!

とにかく!
一郎とはこれからますます距離を置いていかなきゃいけないんだ。
一郎を(いや)すのは、私じゃない。一郎が将来出会う伴侶(パートナー)の仕事だよ。

私はそう自分に言い聞かせ、一郎を突き放すことにした。


「――一郎の事情はわかったけどさ、送迎はもう終わりにして! だいたいうちの会社の社長だって電車通勤なんだよ? なのに平社員の私が送迎されてたらまずいでしょ? そもそも私は送迎なんか必要ない、ただの一般人なんだらさ、危ない目にあうこともないし――」


そこまで言いかけて、私はハッとして口をつぐんだ。

あの誘拐未遂事件。
事件後、私はずっとその話題を避けてきて、一郎に話したことは一度もない。

一郎は覚えているのかな……?

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