ハイスペ御曹司で年下幼馴染の山田一郎が誘ってくる送迎を断ったら、とんでもない目に遭った件

回想 (前)

 ***


それはいつものように一郎の家の庭で二人で遊んでいたときのこと。


「ねえマリちゃん、お外の公園で遊ぼうよ」


ちょっとした冒険心から、一郎がいたずらっ子の目つきになって言い出した。
私たちはお屋敷の警護の目をかいくぐり、近所の児童公園に遊びに行ってしまったのだ。

お屋敷にはない目新しい遊具に、一郎は大興奮。
私にはおなじみの公園だけど一郎がこんなに喜ぶなんて。


(なんだか私も普段より楽しい! でも早く帰ろうって言わなきゃ。一郎はすごいおうちの子だからみんな心配しちゃう……)


けれども私も遊びに夢中になってしまい、すっかりそんなことは忘れてしまった。


「くしゅん!」


冷えこんだ日だったから、くしゃみをした私に、一郎は「寒いの? これ着てよ」と上品な紺のカシミアコートを脱いで差し出してきた。


「こんなきれいなコート、借りられないよ……! それに私のほうがお姉ちゃんなんだから、大丈夫だよ」

「かぜひいちゃうからダメだよ! ボクいっぱい走って暑いしへいきだもん。マリちゃんが着て!」


一郎はほっぺをぷうっとふくらますとぐいとコートを私に押しつけた。

この頃から一郎は同い年の子に比べて頭ひとつ大きかったから、コートは小柄な私にぴったりだった。


「ありがと。あったかいよ」


一郎の温もりが残るコートは、ポカポカして気持ちがよくて。
お礼を言うと、一郎はあふれんばかりの笑顔になった。
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