ハイスペ御曹司で年下幼馴染の山田一郎が誘ってくる送迎を断ったら、とんでもない目に遭った件

一郎、大丈夫?

「……まあストレスたいしたことなければさ、茉莉には頼らないよ」


「頼らない」と言われると、それはそれでムカッときちゃうんだけど。


「ただ今回は……正直結構きつくて」と一郎はネクタイをゆるめながら力なく笑った。


――あれ一郎、ちょっと重症?


ふと私は思い出した。
そういえば一郎は極度のストレスがかかるとコンタクトを受けつけなくなるんだっけ。それだけ大変ってことなんだろう。

心配になった私は、小さい頃からしてきたように一郎の表情を見ようとして……
もう~この眼鏡ホント邪魔! 
表情わかんないじゃん!

……でもまあ、話ぐらいなら聞いてあげてもいいか。確か一郎は研究開発に携わっているはず。

そう思い、私は一郎に尋ねてみた。


「ねえ一郎、そんなに大変な仕事ってさ、今何してるの?」


でも一郎から返ってきたのは、ちょっと残念な返事だった。


「……悪い、言えない。極秘開発(トップシークレット)だからさ」

「そっか……じゃあ話せないよね……」


こんなとき、やっぱり一郎は私とは違う世界の人間なんだなと思い知らされる。
ごく普通の会社の一般事務職の私には想像もできないよ。
――やっぱり、私は離れて正解なんだろうな。

けど、こんなに一郎が疲弊(ひへい)しているなら、今だけは(いや)し役になってあげたほうがいいのかな……?
ああっ、もうどうしたらいいの?




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