進路指導室で、愛を叫んで
唇を尖らせた先輩は「とにかく!」と声を上げた。
「入部届、ちゃんと出したんだよね? よし、それじゃあ……学校の花壇を案内するね」
「はい、よろしくお願いします」
ニコニコと歩き出す先輩についていく俺の顔は、多分由紀たちが見たら引くくらい、溶けていたと思う。
先輩の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩く。
校門から学校をぐるりと半周して裏門へ向かうと、チューリップがずらりと並んでいた。
さらにそこからもう半周すると、今度はシバザクラが一面に広がっている。
「これ、全部先輩が植えたんですか?」
「うん。チューリップは秋に。シバザクラも秋から冬にかけて順番にね」
「すごく綺麗ですし、手入れも行き届いてます。先輩の人柄がよく表れていて……かわいくて、綺麗です」
「……ありがと……」
校門に戻ると、昇降口へ向かう通り沿いのプランターや、校舎沿いに並ぶ花壇を眺めながら、再び中庭へと足を向けた。
中庭の花をじっくりと見せてもらったあと、ベンチに並んで腰を下ろした。
「世話してる花壇はこんな感じ。毎朝水やりして、放課後は時期によるけど、植え替えや草むしりとか……まあ、普通の手入れだよ」
「ところで」と先輩は俺を見上げた。
「須藤くんは、なんで園芸同好会に来たの?」
「うち、造園屋なんです。それで、草花にも興味があって、見に来ました。藤宮先輩って実家花屋さんなんですよね?」
「な、なんでそれを?」
「美園先生に聞きました。あ、美園先生って、俺の友達の叔父さんなんです。前からの知り合いで、ちょっと話す機会があって」
「そうなんだ……。うん、うちね花屋やってるの。そんなに大きいお店じゃないけど、いつも花がいっぱいあって、いい匂いがして、すごく好きな場所だから、高校出たら手伝いながら継ぎたいなって」
夕日に照らされた先輩の瞳が、きらきらと輝いている。
春風に揺れる髪からはふんわりと花のような香りがして――やっぱりこの人は、人間じゃなくて妖精とか天使とか、そんな、現実離れしたきれいな生き物にしか見えなかった。
……そう思い込まないと、つい手を伸ばしてしまいそうで。
だから、そういうことにしておいた。
「入部届、ちゃんと出したんだよね? よし、それじゃあ……学校の花壇を案内するね」
「はい、よろしくお願いします」
ニコニコと歩き出す先輩についていく俺の顔は、多分由紀たちが見たら引くくらい、溶けていたと思う。
先輩の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩く。
校門から学校をぐるりと半周して裏門へ向かうと、チューリップがずらりと並んでいた。
さらにそこからもう半周すると、今度はシバザクラが一面に広がっている。
「これ、全部先輩が植えたんですか?」
「うん。チューリップは秋に。シバザクラも秋から冬にかけて順番にね」
「すごく綺麗ですし、手入れも行き届いてます。先輩の人柄がよく表れていて……かわいくて、綺麗です」
「……ありがと……」
校門に戻ると、昇降口へ向かう通り沿いのプランターや、校舎沿いに並ぶ花壇を眺めながら、再び中庭へと足を向けた。
中庭の花をじっくりと見せてもらったあと、ベンチに並んで腰を下ろした。
「世話してる花壇はこんな感じ。毎朝水やりして、放課後は時期によるけど、植え替えや草むしりとか……まあ、普通の手入れだよ」
「ところで」と先輩は俺を見上げた。
「須藤くんは、なんで園芸同好会に来たの?」
「うち、造園屋なんです。それで、草花にも興味があって、見に来ました。藤宮先輩って実家花屋さんなんですよね?」
「な、なんでそれを?」
「美園先生に聞きました。あ、美園先生って、俺の友達の叔父さんなんです。前からの知り合いで、ちょっと話す機会があって」
「そうなんだ……。うん、うちね花屋やってるの。そんなに大きいお店じゃないけど、いつも花がいっぱいあって、いい匂いがして、すごく好きな場所だから、高校出たら手伝いながら継ぎたいなって」
夕日に照らされた先輩の瞳が、きらきらと輝いている。
春風に揺れる髪からはふんわりと花のような香りがして――やっぱりこの人は、人間じゃなくて妖精とか天使とか、そんな、現実離れしたきれいな生き物にしか見えなかった。
……そう思い込まないと、つい手を伸ばしてしまいそうで。
だから、そういうことにしておいた。