進路指導室で、愛を叫んで
 体育祭でも先輩の写真を取ったり、競技の合間に話したりする。


「先輩の体操着姿すごくかわいいですね。髪型もいつもと違って、これも素敵です」

「……うん、ありがと」


 真っ赤になって目を逸らす先輩が、やっぱりかわいくて。つい一人でニコニコしてしまった。

 学校じゃなければ、抱きしめたくなるくらいだ。


「先輩は午後の応援合戦、どの辺りにいますか?」

「えっとねー……」


 昼休みが終わると三年生の応援合戦がある。

 先輩もチアの衣装で出るから、カメラを持って向かおうとしたら、クラスの女子に引き止められた。


「ねえ、須藤くん、ちょっと抜け出さない?」

「抜け出さない。今、急いでるから」


 走って先輩の方に行くと、由紀が着いてきた。


「かわいそうじゃない?」

「かわいそうじゃない。俺は忙しいし、先輩以外の女子と、そういうのは無理」

「あ、わかってたんだ。告白したかったらしいけど」

「そんなの、されたくない。あ、先輩!」


 チア姿の先輩が出てきたので、写真を撮らせてもらった。

 ツーショットも由紀に頼んで撮ってもらったから、今日の目的は達成。


「最高。かわいい……好き……」

「告ればいいのに」


 呆れ顔の由紀を睨む。


「それは無理だ。俺、先輩の夢の邪魔だけはしたくない」

「難儀なことで」


 由紀は鼻で笑って、水筒を傾けた。
< 6 / 21 >

この作品をシェア

pagetop