契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「那湖」


 低く甘い声音に呼ばれる。
 それが侑李さんのものだというだけで胸の奥が甘く締めつけられ、下腹部のあたりがむずっ……と疼く。


「今夜は覚悟してくれ。朝まで離せそうにない」


 言うが早いか、彼の顔が近づいてくる。
 二秒も経たずにキスが落とされ、私は早鐘を打つ心臓の音が頭まで響くのを感じながら受け入れた。


 一度唇が離れて、また結ばれる。
 二回、三回、四回……と続いて数え切れなくなった頃、舌が押し入ってきた。
 最初は少しばかり遠慮気味に、けれどすぐに激しくなり、私の口腔を貪り始める。


「んっ……っ、んぅ……はぁ……」


 その熱と力強さに翻弄されつつも、必死にキスに応えようとした。
 口の中でお互いの唾液が混ざり合い、もうどちらのものかわからなくなる。
 あっという間に侑李さんのキスに夢中になっていき、彼が私の鎖骨に触れてそっと撫でた時には甘い声を上げてしまった。


「あっ、ッ……んっ……」


 ドレスの上からだというのに、侑李さんの手が触れるたびに体が小さく跳ねる。
 どんどん熱が上がって、終わる気配のないキスと甘い愛撫に呼吸が荒くなっていく。
 視界の端に映るまばゆい夜景よりも、欲に満ちた彼の表情に酔いしれてしまいそう。


 好き、なんてこんな状況でも言えないけれど……。クラクラする頭の片隅で、もう恋を知らなかった頃に戻れないほど彼に恋をしていることを強く自覚していた。

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