契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
 金曜日の夜。
 夕食後に侑李さんから『話がある』と言われ、彼にはアールグレイティーを、自分にはノンカフェインのハーブティーを淹れてソファに腰を下ろした。


 このハーブティーは、侑李さんがくれたもの。
 彼は妊娠中にいいという食べ物や飲み物を調べては購入し、私の体調や口に合うと追加で買ってくれる。
 つわりや妊娠中の体調についても、私よりも丁寧に調べていた。


「それで、話って?」
「あの男……中郷のことなんだが」


 反射的に、体と顔が強張ってしまう。
 あれ以降、中郷課長からの連絡はないままだ。
 駅などで待ち伏せされているんじゃないか……と不安になったこともあるけれど、それは杞憂で終わった。


 今は私がここに引っ越してきたため、前に住んでいた家の最寄り駅は使わなくなったことで心配がひとつ減っている。
 ただ、やっぱりもう関わりたくないし、名前すら聞きたくない。


「心配しなくていい。怖い話じゃないから」


 緊張感を走らせた私に、侑李さんが安心感を与えてくれた。


「詳しいことは言えないが、俺は今、仕事でDD機器に関わってる。だから、同時進行で中郷と那湖のことも調べたんだ」


 お互いの想いを伝え合ったあと、彼には私がDD機器に勤めていたことや辞めた時のことをさらに詳しく話している。
 ただ、調べた経緯は訊かない方がいいと思い、相槌を打つように小さく頷く。

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