契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「まず、中郷は去年の八月下旬に部下へのセクハラが原因で離婚してる。相手の女性は中郷の直属の部下で、中郷の元妻とは学生時代からの知り合いだったらしい。元妻が大学生、被害者の女性が高校生の時、バイト先で知り合ったそうだ」


 それを聞いて、被害者の女性が私の一年後輩の社員だとわかる。
 可愛くて大人しい雰囲気で、紘奈さんによく懐いていた。
 紘奈さんはその女性から相談を受けてすぐに離婚を決め、中郷課長から私にメールが届くようになったのも同じ頃だったのだ。


「そうですか……」


 課長はともかく、紘奈さんが離婚したということに戸惑った。
 一方で、中郷課長には不快感や嫌悪感しかないため、ふたりが離婚したことにはホッとする気持ちもある。
 だって、彼女のような素敵な人には幸せでいてほしいから。


「このことを教えてくれたのは、中郷の元妻である中郷紘奈さんなんだ」
「えっ……?」


 離婚時期まで知っているなんて詳しいと思ったけれど、まさか紘奈さん本人から話を聞いたとは思わなくて驚いてしまう。
 同時に、ドキッとした。
 彼女と話したのなら、私のことも聞いている可能性がある。
 不倫疑惑が消えていない私を、紘奈さんはよく思っていないだろう。
 それを踏まえれば、彼女がなにを言ったのか不安になった。


「彼女から伝言を預かってる」
「はい……」


 侑李さんが私の潔白を信じてくれていても、紘奈さんから聞いた話によっては嫌悪感を抱かれることもあるだろう。
 そう考えて怖くなったけれど、きちんと聞かなければいけない。
 これが、あの時に彼女に真実を話せなかった私の責任でもあると思うから。

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